転職の3動機~現職を「卒業する・去る・逃げる」

2012.05.11

仕事術

転職の3動機~現職を「卒業する・去る・逃げる」

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「転職」という選択肢は、いわば“ワイルドカード”であり、ハイリスク・ハイリターンである。自分の動機がどこにあるのかをしっかり認識して、そのカードを切る/切らないを考えたい。

 「こんな会社でくすぶっていては人生の時間がもったいない。早く転職しなければ」と焦る気持ちはわかります。人材紹介業の発達している時代ですから、登録して面接をすれば、何がしかの会社に移れるかもしれません。しかし、そのときの自由は、実は“小さな自由”です。
 現職でしっかりと実績をつくる。望ましくは伝説の1つくらいつくる。自分をそういう状態にすれば、会社から「今度、新規のプロジェクトを任せたいんだが」と昇進の機会が得られるかもしれませんし、他社から引き抜きのオファーだってあるかもしれません。そこまでいかなくても、明快な結果を出すまで自分を成長させたのであれば、転職するにしてもその候補は広がってきますし、実際、面接の際には、その実績が強力なアピール材料となり、合格を勝ち取れる確率は相当高まるはずです。あるいは、先の土井さんのように、世間が騒ぐような伝説をつくってしまうと、独立起業という選択肢も見えてきます。つまり、現職環境から粘り強く結果を出すことで、もっと幅広い選択肢が手に入るようになってくるんです。さらに言えば、選択肢が向こうから寄ってくる。これが“大きな自由”です。

 ですから、もしあなたが、いまの会社で転職しようかどうしようかウジウジしている状態であれば、あと1年なら1年、2年なら2年と期間を区切り、「伝説をつくるぞ!」と目標を決めてがむしゃらにやることです。それができたとき、いまよりはるかに豊富な選択肢を手に入れることができているにちがいありません。
「ここで結果を出せない者は、他に移っても結果を出せない」ととらえ、自分を厳しく立たせることです。

◆「動く」場合の底にある動機は何か
 とはいえ、「キャリアが行き詰ってどうしようも手がない」、「こことは違う場所に明らかに大きなチャンスがある」、「現職場には抜き差しならない重大な問題がある」などのときは、やはり、その場から動くという選択肢が現実味を帯びます。
 もし、現在の雇用組織の内に、他に移ることのできる適切な場所があれば、そこに「異動」するのがリスクの低いやり方になるでしょう。同じ組織内であれば、転属に伴うわずらわしい手続きや費用的なロスもないでしょうし、組織文化や仕事のやり方といった環境面での変動も少なくてすみます。一般的に、複数の事業を持つ大企業ほど、組織内には多様な職場や職種転換機会があり、その意味で恵まれた環境にあるといえます。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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