4月20日付日本経済新聞の消費欄記事「JR東京駅の店舗 ノジマ 携帯、素早く機種変更」とある。八重洲側の日本橋口近くにある店舗を昨日視察したが、白く明るい店舗はエキナカであるにもかかわらず40平米という数字以上に広く感じる。記事によれば、通常30分はかかる機種変が、最短5分だという。
ヒミツは、通信キャリアから通常各店に1台しか貸し出されない契約用端末を3台設置していることだという。どのような交渉の成果かは分からないが、その効果は高い。
ここの店舗・サービスが今後指示されるか否かを考えるには、消費者のメリットを通常の「4P」ではなく、ロバート・ラウタボーン提唱の「4C」で検証すると分かりやすい。
Customer Value(Productに置き換わる要素)=ここでは何と言っても「早さ」が価値である。この「時間」に対する価値が近年高まっている。「すすぎ1回の洗剤」や「お掃除ロボット」などによる家事時短もその一端だ。
Customer Cost(Priceに置き換わる要素)=この時短製品は通常製品より割高だったり、移動に関わるコストは特急料金が取られたりすることが多いが、場合、早さに対する代償を求められるわけではない。かなりお得だといえるだろう。
Convenience(Placeに置き換わる要素)=それは東京駅にエキナカという立地(Place)あってのことであるが、昼休みや仕事帰りに5分という圧倒的な利便性を提供している。
Communication(Promotionに置き換わる要素)=特にプロモーションを行っている様子はないが、口コミを中心として利用客は拡大するだろう。視察時にも夕方の帰宅時にあたったこともあり、かなりの客が足を運んでいた。
ここで、今一度注目したいのが、各要素の「整合性」である。
「4P」を考えるキモも、各々の要素がバラバラで効果を挙げようとするのではなく、全体として消費者にアピールできることが求められるが、「4C」においても同様なことがいえる。この場合、最大の武器である「早さ」を顧客提供価値として整合性を図っていることが分かるだろう。つまり、顧客に「安さ」や「品揃え」という家電量販店にありがちなKBF(Key Buying Factor=購入理由)だけでなく、「時間」を提供するというという明確な差別化戦略の軸を持ち込んでいるのだ。
ともすると「時間」の概念はマーケティングのフレームワークでは明示されることが少ないため見落としがちである。しかし、現代社会においてその重要性十勝は益々増している。それを忘れないためにも、同じ事象を異なるフレームワークで検証するなどして、明確化することをオススメする。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。