今秋冬物から始まった、ユニークなダウンウェアブランド「YOSOOU(ヨソオウ)」が10月24日付日経MJのコラム「モード最前線」で紹介された。その狙いは何だろうか?
まずは、同ブランドのWebサイトを見てみるとしよう。その特徴が端的に示されている。
http://dualflex.jp/
MJの記事にも<よくあるダウンを看板にしたカジュアルブランドではない>と示されている。同ブランドは<コートだけでなく、ジャケットからトレンチコート、スカートやドレス、それにボウタイまですべてがダウン入りだ>というのが特徴。さらに、伸縮率130%の新素材「Dual Flex」を用い、ダウンにありがちなモコモコ着ぶくれした姿ではなく、野外ではなく街で着ることを想定してスタイリッシュに仕上げられている。
伸縮性新素材が生んだ特長を活かして、ユニークなターゲットの設定をしている。
<一つの服を男女だけでなく、年代を超え、太っている、痩せているといった体型をカバーして着ることすらできる。まさに家族みんなで着回せる服を目指している>という。
ポジショニングも明確だ。<ひとつのブランドで全身を装う人はあまりいない。買うのもセレクトショップが多い。「ならば無理してあれこれやるより、ひとつに絞って徹底した方が面白いものができる」>というディレクターの言葉がそれを表している。
「家族みんなで着回し」というからには、あまりに特別な服では困る。特に価格面がモード系にありがちな目が飛び出るような価格では。その点も安心だ。ジャケット2万8千円台。ドレス4万7千円台など、手の出る価格に設定されている。
マイケル・ポーターは競争力の源泉を「戦略の3類型」にまとめた。幅広い市場を戦場とし、コストを武器に戦う「コストリーダーシップ戦略」。それに対し、コスト優位は築けないものの、目に見える差別化要素で戦う「差別化戦略」。一方で、広い戦場で戦う力がない場合は、特定の市場に集中して戦いを展開する「集中戦略」をとる。
カジュアルウェアという戦場においては、ファストファッションの勢いがいまだ衰えない。特にダウンウェアはユニクロの「ウルトラライトダウン」が今年も「数百万枚レベル」と同社役員が販売目標数を発表しているとおり、市場を席巻している。製造数が多くなることによって工場設備費などの固定比率が低減し、より低コストで勝負できる「規模の経済」を効かせた「コストリーダー」の戦い方だ。
それに対して、スポーツメーカー・ゴールドウィンの「ノースフェイス」などのブランドは、価格では勝負できないものの、完全な防水「ゴアテックス」などの機能的差別化を図る戦略を強めている。
「YOSOOU(ヨソオウ)」の戦略は「集中戦略」だ。ユニクロもノースフェイスもダウンウェアだけを作っているわけではない。しかし、「YOSOOU(ヨソオウ)」はダウンだけ。ダウンに集中しているため、自ブランドでショップを持つことはしない。イベントショップか、セレクトショップに販売委託をしている。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。