トヨタが軽自動車に参戦した。その名は「ピクシス」。ダイハツからのOEM供給だが、気になるのはその価格。112万~168万円だという。供給元のダイハツも新型軽自動車「イース」の発売を発表しているが、燃費がリッター30Kmとガソリンエンジン車としては最高クラス。にもかかわらず、価格は79万8千円からだ。あまりに違う両社のスタンスのナゾを考察してみよう。
■「いつかはクラウン」か?
「ピクシス」は<全国の3095店を通じて販売する。軽を足がかりに顧客層を広げ、将来的には普通車への買い替えを促す戦略だ。特に、保有自動車に占める軽の割合が過半数の地域で攻勢をかける>(同YOMIURI ONLINE)という。トヨタはオールラインアップメーカー故に、顧客の要望があれば軽自動車も取りそろえなければならない。そして、買い換えのたびに上級車にシフトさせる「出世魚方式」が販売店の伝統だ。
1991年にバブル経済は崩壊したが、話はRV車「RAV4」が発売された94年に遡る。当時、激震が走ったと筆者は販売会社の担当者から聞いたことを思い出す。クラウンに乗っていた高齢ドライバーが、突然RAV4に買い換えるという事例がいくつも出たというのだ。高齢ドライバーにとって「取り回しのよさ」は切実な問題だ。RAV4は、車体の短かさと運転席が高いことによる見通しの良さがKBF(Key Buying Factor=購買決定要因)となったのだ。今日、当時以上に消費者の価値観は大きく変化している。「出世魚方式」はいつまでも通用しないだろう。
「レガシイ」「インプレッサ」などのスポーツタイプの車種に特化したスバル自動車は、ラインアップの中から軽自動車をあえて来春から外し、撤退するという。一方、前述の通り世界戦略車「マーチ」を抱える日産自動車は、三菱自動車と開発会社を共同設立した。トヨタはどのように「本気出す」のだろうか。その時、どのような価格戦略をとってくるのか。その時が楽しみである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。