吉野家は「牛鍋丼」を刷新し、同時に「とろりチーズ」などのトッピング小鉢を投入した。そこには重大な意思決定が隠されているのである。
それでもあえて、「パンドラの箱」を開けたのは、前述の通り新規客集客と店舗オペレーション効率化に加えて、顧客ニーズへの対応という側面も否めない。記事は今回の牛鍋丼の刷新が、トッピング併買を前提としたものであることが伺える吉野家役員のコメントを記載している。「新しい牛鍋丼にマッチする、できるだけあっさりとして溶けやすいモノを選んだ」とトッピング具材の選定基準を明かしているのである。
ゼンショーは安価な牛丼で集客し、実際にはトッピングバリエーションのメニューで稼ぐ収益モデルである。業界最大手のメニュー提案に消費者もすっかり慣れ、「牛丼は好みのトッピングをして食べる物」という認識が出来上がってきているともいえるだろう。それ故、「松屋」も昨今、トッピング牛丼に相当するメニューを強化している。吉野家も戦いのルールが変わったのであれば、それに対応せざるを得ない。
記事には同社役員の象徴的なコメントが掲載されている。<「牛丼を磨き上げる。当社はそういう気質の会社。同じように牛鍋丼にも磨きをかけた」>という。これからは牛鍋丼をメインメニューとして牛丼戦争を戦っていく覚悟が感じられる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。