コンビニスイーツが絶好調だ。そして、その影響を受け地元の街からケーキ屋が消えるかもしれない。どうしたらいいのだろうか?
前掲のBusinessMedia誠の調査リポートでは、百貨店のスイーツは前年比1.7%減の3498億円と苦戦しているとあるが、その原因は高価格帯商品の不振や相次ぐ閉店であるようだ。
それより深刻なのが、最も市場規模が大きい総合洋菓子店だ。2011年の市場規模は、前年比6.9%減の2175億円になると見込まれているという。
街の洋菓子店でスイーツを買うのはどんな時だろう。もちろん、誕生日やクリスマスのホールケーキはれっきとした「ハレの日」需要だ。だが、それ以外の個食のカットケーキは特別な日ではない、さりとて日常でもない、ちょっとしたハレの日。「小バレ」ともいうべき日に買われていたのではないだろうか。カットケーキを選んで組み立て式の紙の箱に入れてもらう。小さなサプライズに用いられるのに、ケーキは贈る側にも贈られる側にも最高のアイテムだ。だが、ローソンのリリースの写真を見ると、その需要をすっかりすくい取ってしまうだけのインパクトが新しいラインナップにはある。
調査リポートでは、洋菓子店の中には「ロスが少なくコンビニとあまり競合しない焼菓子に注力する動きが見られる」とある。「ケーキを買ってきたよ」といわれて期待に胸を膨らませて中を見たらパウンドケーキだった。なぁんてことになったら、キモチの凹みはハンパでは済まない。そうした反応を避けるためにも、洋菓子店ではなく、今後はローソンで「UchiCaféSWEETSシーズンズコレクション」が選ばれることになる。街の洋菓子店は存亡の危機である。
「エイビスの車をお使いください。カウンターにお並びいただく列は、ずっと短くなっております」。米国のレンタカー会社の広告コピー例だ。業界№2を標榜するエイビスは、1位のハーツが追従しようにも追従できない戦略で攻撃している。すなわち、顧客数が少ないということは、すぐにチェックインできる最大の武器であったのである。(逆転の競争戦略:山田秀夫・生産性出版より抜粋)
街の洋菓子店の顧客数はコンビニとは比べものにならないぐらいに少ない。また、店員の数も限られており、家族経営も多い。だとすれば、その規模の少なさは大きな武器になる。馴染み客を店員はおぼえているだろう。時々来る客もなんとなくはわかっているだろう。では、たま~に来る客は・・・?
戦い方の基本は顧客の個別認識の徹底だ。スタンプカードレベルの顧客管理とリピート促進施策を行っている店は多い。そのレベルを上げるのだ。顧客に対する購入や来店に対するインセンティブを高め顧客情報を収集し、「ハレの日」を確実につかんでメールやDMで事前にオススメのアプローチを行う。「小バレの日」に来店したときには顧客の好みに合わせた商品のオススメを行って、「わかってるなぁ~」という心理的満足感を与える。顧客をできるだけ名前で呼ぶ。小バレの日ほど、ちょっとした気遣いが顧客のココロに響く。
顧客の個別識別は商売の基本である。だが、いままでそれが十分できていたかは疑問だ。明確な強力な競合が出現したときこそ、まずは基本に忠実になり徹底すべきだろう。それこそが、商品力と価格だけで勝負しないためのカギとなる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。