イトーヨーカ堂が20~40代向けのカジュアル衣料などのPB(プライベートブランド)「グッデイ」の衣料品を発売し、SPA(製造小売り)に始めて乗り出したという。一方、従来からの国産PB「Made in Japan」も息の長い取り組みをしている。
ユニクロがベーシック回帰する一方で、海外ファストファッション勢は相変わらずファッション性が売り物だ。H&Mは世界規模での販売を前提に「多品種大量販売」を仕掛ける。ZARAは売る場で売れている商品を製造現場にフィードバックして、再度製造から販売までのバリューチェーンを高速回転させる「少量高回転大量販売」を得意技としている。
消費者が「購入する理由」をKey Buying Factor(KBF)という。価格の安さ、品質、オリジナリティーなど個々人において様々なKBFが存在する。そして、そのKBFを実現する成功のカギをKey Success Factor(KSF)という。するその中で、「Made in Japan」は「多品種少量」による自分にピッタリであるというフィット感やオリジナル感というKBFを実現しようとしている。そして、そのKSFは日本メーカーとのコラボレーションによって、<調達購買物流→商品開発→製造→出荷物流→販売>というバリューチェーンの物理的距離を短くし、短時間で回していくことにある。
だとすれば、「Made in Japan」は上記のZARAのモデル以上に国内産地のメリットを活かした「少量高回転」が可能となる。消費者の欲しいものや流行をキャッチアップして、すぐに製造し売り場に並べるのである。そこで必要なものは、多少割高でも「価値」を納得して買ってもらえるような商品企画のノウハウであり、それを可能にする販売現場での顧客の声の吸い上げだ。
大量生産による「規模の経済」によって安価に商品を提供するSPAの逆張りともいうべき展開は、確かに<中国製など海外製品に比べると平均3割ほど高い>という。しかし、<「品質を意識する人が増えれば、今後はプラスワンとして日本が注目されるようになる」>と同社では読んでいるという。
大震災以降、消費者のモノの購買に対する意識は変化している。不要不急のモノの購買を控えるという段階からは脱しているが、自らの納得するモノを選ぼうという意識は強まっているように思える。その意味では、ヨーカ堂の「Made in Japan」にはチャンスが到来していえるといえるだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。