8月31日。誰しも知るオヤジの街・新橋。その最深部ともいうべき烏森の入り口であるJRの駅通路にオシャレな駅貼りポスターが出現した。広告主はセレクトショップのBEAMS。キャッチコピーは「恋をしましょう」だ。ナゼ、新橋にポスターを貼ったのか?
オヤジの「恋」というと、なにやら不倫臭が漂い、ドロドロしたイメージが想起されるかもしれない。だが、誰もが「天城越え」的な情念の世界にまで足を踏み入れるわけではない。
「恋は遠い日の花火ではない」。
サントリーオールドのCMの名コピーだ。長塚京三、田中裕子、大森南朋らが演じるのは「恋の気配」だ。実際には何にもないかもしれない。だけど、胸が温かくなる想いを持ってみなよ、というメッセージが伝わってくる。
BEAMSのサイトには3篇の「恋をしましょう体操」がアップされている。
娘である蒼井優が言葉の通じないインド人の彼氏を親に紹介する「異国の彼篇」で、母親が彼氏を気に入り「イメージは大切よ!」と父親に力説する。
友達の彼を好きになってしまう「人の彼篇」。付き合いが長いという友達と彼氏。彼はデートの際に鼻毛が飛び出している。惰性の生活はダメというメッセージだ。そんな彼のどこに惹かれたのかはナゾであるが、ともかく蒼井優は「磨くわワタシあそこもここもピカピカに」と歌う。
「恋人だらけのカフェ篇」では、「なんにもないとかそんな日は、恋とか落ちたらいいかもね」「怯えていたらなんにもないのわかってる」とさらに背中を推す。
3つの動画では、「まずは自らのイメージを良くせよ」「自分を磨け」「惰性の日常と決別せよ」とメッセージを伝えているのだ。
新橋烏森口を通行するオヤジたちは、実は最もキャンペーンの対象になるのではないか。
かつてはポパイを買い、恋にトキメキ、BEAMSの服を買って自分を磨いていた青年も家庭を持ち仕事と生活に追われるようになった。だが、ある程度地位と収入も上がり、子どもも自立していった。そんな時にぽっかりと空いた胸の穴ボコに気付く。それを見ないようにして日常に埋没していく日々。そんなオヤジにBEAMSは「戻っておいで」というメッセージを込めてポスターを貼ったのではないだろうか。
恋は遠い日の花火ではなかったら、どうすればいいのか。まずは「自分を磨く」のだ。イメージを良くして、人からよく見られることもさることながら、自分に自信を持つ。そうして、実際は何もなくとも「なんにもないとかそんな日は、恋とか落ちたらいいかもね」と、恋するココロを思い出してみる。すると、惰性に満ちた日常が意外と輝いて見えてくるかもしれない。
「恋をしましょう」のポスターとWEBサイトにあるコンセプト全文を引用したい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。