水は方円の器に随うのか?~ゲロルシュタイナーの機会と課題~

2011.08.28

営業・マーケティング

水は方円の器に随うのか?~ゲロルシュタイナーの機会と課題~

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「ゲロルシュタイナー」(GEROLSTEINER)は、100年の歴史を持つドイツNO.1の天然炭酸水。強い炭酸性を持ち、しかも、カルシウム、マグネシウムといったミネラル類を豊富に含んでいる。ユニークな特性を持ち、私自身ヘビーユーザーでもある商品だが、拡販においては悩みもあるらしい。日本国内での販売を手がけるサッポロ飲料にお邪魔してみた。

■導入当初は、チャネル確保に苦慮

 「この商品の取り扱いを決めたのは、ほとんど勘でしたね」と、2004年当時を振り返るのは、同社ブランド戦略室長の古林秀彦氏。ドイツNO.1のナショナルブランドであり、海外展開の実績もある。だが、日本市場にはまだ並行輸入も含めて入ってきていないという希少性も魅力だった。当時日本はミネラルウォーターの成長期。その中で、ただのミネラルウォーターではなく、「次は炭酸水のブームが来る!」と直感が働いたという。

 とはいえ、その直感の正しさが立証されるまでには、相応の歳月を要した。炭酸水という商材自体の認知が低く、チャネルの確保に地道な交渉を要したためである。

 2004年の日本市場への導入時は、料飲店など外食での利用を視野に、まずはガラスびん入りの1リットルと330ミリリットルでスタート。その後、顧客が日常の中でより気軽に手に取れる形態として、500ミリリットルペットボトルのタイプを2007年3月に首都圏のコンビニエンスストアに配架、翌2008年5月に1リットルペットボトルが量販店に並ぶ運びとなった。「ドイツ本国や欧州、北米で流通しているのはガラスびん。ペリエ、サンペレグリノなど日本国内で先行していた炭酸ミネラルウォーターもガラスびんでの流通であったため、ペットボトルでの展開はチャネル拡大に奏功すると考えた」(古林氏)ことが効いた。

 その後、さらなる販路拡充のため自動販売機への投入を検討したが、「ドイツ側に日本の自販機に合うサイズのペットボトルを作ってもらうのが、大変だった」と古林氏。ゲロルシュタイナーは、<購買物流>→<製造>→<出荷物流>→<営業・販売>というバリューチェーンのうち、<購買物流>→<製造>まではドイツで行うことが前提の商品である。「官報に掲載された特定水源より採水された地下水で、源泉から直接採取され、そのままボトリングされたもののみを『ナチュラルミネラルウォーター』と呼称できるとEUにより定義されている」(古林氏)ためだ。従い、なんとかしてドイツで日本用のパッケージを作ってもらわなければならないわけだが、ドイツ側からすれば、「どれほどの規模のなるかもわからぬ日本市場だけに特化して新しいパッケージの製品を作る必要性は感じられない」というのが正直なところだったのだろう。結局、約2年後となる2010年にようやく自動販売機に収納できるサイズのペットボトルが開発され、全チャネル展開が完了した。

次のページ■割り材→直接飲用という消費者の変化が追い風に

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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