有名ブランドのバッグなどが付録に付いた…というより、バッグに雑誌が付いているような形態の女性誌の売り上げがついに減速してきたという。その気になる原因と打開策を考えてみたい。
一方で宝島社は依然強気のようだ。<「地方など付録付きの需要を開拓する余地はまだある」>とコメントしている。
記事は<衝動買いを誘うカンフル剤としての付録効果はじわじわ薄れてきている。付録のみに頼らず、読者をつなぎ止めるコンテンツそのものの充実が、今後改めて問われることになりそうだ>と結んでいる。
さて、宝島社の見込みと日経の読み、どちらが正しいのか。
筆者は、「読者」「消費者」と市場を一律に見ることを改める時期にきているのだと考えている。その意味では、市場全体としての「飽き」は否めないが、「地方需要」は確かにあるだろう。なぜ、地方なのか。それは、都市部ほど簡単にブランドものやオシャレなものに触れる環境にないからだ。それが、近所の書店やコンビニで手に入れられるのだ。その新たな流通チャネルとしての役割に対する支持はまだ続くだろう。また、日経は「付録はあくまでオマケ、雑誌本体のコンテンツこそ商品」との立場であるが、宝島社の付録界初に対する力の入れようは「付録こそコンテンツ」との勢いだ。それをさらに強化するという方向性も否定はできない。
具体的に考えてみよう。ターゲティング・ポジショニング・4Pをきちんと整合させて考えることがポイントだ。
【ターゲット】
地方在住でオシャレ感度が高いが、都市部までなかなか出られない層。属性でいうと、時間的余裕が少ない主婦層がメインターゲットとなるか。
【ポジショニング】
ちょっとしたお出かけ時に持ち歩けるオシャレグッズ。それが、最寄りの書店やコンビニで手に入るという利便性と、ブランドもの所有の自己満足の充足を提供してくれる存在。
【商品】
雑誌の付録形態。但し、現在の「ただの袋物にロゴを入れただけ」ではなく、実体としての質感を向上させるなり、付随機能としての便利な機能を付加するなりの価値向上が必要。ここは宝島社のより一層の努力が必要。
【価格】
現在より規模化できないため、価格上がらざるを得ない。また、価値向上も価格上げ要素。Customer Valueの上限いっぱいを見据えてプライシングが必要。ギリギリ2000円未満か。
【販路】
書店及びコンビニに専用什器を設置。特にコンビニは客単価交渉に貢献してくれる商品を優遇するため、有望なチャネル。(チャネルのニーズとの整合)
【販促】
店内POPや販売事前告知チラシ。
最後に、まだまだ付録の支持が得られるという証左に消費者の声も紹介しよう。筆者と同年代の本家バブル世代の女性だ。「最近は向井くん表紙のMEN's non-noにビーサンが付録についてたのを本屋で見つけ買いました。喫茶店で25ansの次号付録に英国妃愛用のYSLの特製スカーフが付くことを知ったので25ansの来月号は買うつもりです」。ターゲットは地方・都市部というエリアだけでなく、年代というセグメントの属性ももう一度見直すことも再活性化のポイントであると考えられる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。