付録付き雑誌バブル崩壊!…では、どうする?

2011.08.11

営業・マーケティング

付録付き雑誌バブル崩壊!…では、どうする?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 有名ブランドのバッグなどが付録に付いた…というより、バッグに雑誌が付いているような形態の女性誌の売り上げがついに減速してきたという。その気になる原因と打開策を考えてみたい。

 8月9日付日本経済新聞に「付録付き雑誌品定め厳しく 部数、今年はマイナス基調に」という記事が掲載された。

記事によれば<出版科学研究所(東京・新宿)によると、雑誌全体の推定発行部数が5~10%のマイナスを続ける>という環境下で、女性向け付録付き雑誌は<昨年に前年実績を4%上回る月もあった。だが、今年1~6月の部数は8.6%減。7.8%減だった同期の雑誌全体の減少率を上回った>という。特にムック(不定期刊行物)に限っては<オリコンによると、昨年1~6月に25.1%伸びたムックの推定売り上げ部数も、今年同期間は3.4%減に。「付録付きの減少が全体を押し下げた」(オリコン)>と、雑誌界の救世主から、一転してブレーキ要因とされてしまっている。

 雑誌不況を乗り切るために、日本雑誌協会が付録の流通に関する自主規制を緩和したのが2001年のこと。その後宝島社がブランドとのコラボレーションを開発して「付録時代」に突入した。20代向け女性月刊誌「sweet」の昨年10月号は過去最高の115万部を記録したという。
 人気のヒミツは「価格」だろう。人気ブランド、高級ブランドのバッグやポーチなどが1000円前後で買える。しかも、ブランドショップには売っていない、その時しか手に入らないオリジナルだというからみんなが欲しがるワケだ。ブランド小物が1型100万個の数量を作ることはあり得ない。価格のヒミツは「規模の経済」が効いているからだ。そこに至って、1991年のバブル経済崩壊後、「賢い消費」を模索してきた消費者も、ついつい「付録バブル」に踊ってしまったわけだ。消費者の書籍・雑誌離れに悩んでいた書店も渡りに舟と一緒に踊った。従来書店に足を運ばない層を取り込むという趣旨で、「書店内書店」として「宝島社専用売り場」を宝島社が持ちかけ、昨年4月に福岡紀伊国屋、9月に池袋リブロが開催した。
 古い話だが、「仮面ライダースナック」などのヒーローモノのカードが付いたスナック菓子が流行した時代、カードが欲しくて菓子を捨てていた子どもがいた。「食べ物を捨てるなんて」と当時問題になったが、「付録バブル」に踊るオトナたちも、書店店頭で付録だけを取り出し、荷物になるからと雑誌本体の廃棄を依頼するケースもあったとメディアが伝えていた。

 いつか弾けると思っていた「付録バブル」がついに崩壊したという感が否めない。
 記事には「まとめ買いが減少」というサブタイトルがあり、<「何冊も購入する人が昨年より減った」>とのジュンク堂三宮店(神戸市)のコメントもあるが、<以前は雑誌なら色違いを揃えたり贈答用に買ったりする女性客が多かった。1人で20冊“大人買い”するケースもあったという>と、どうにも大人気ない、買い方があまりまともだったとは思えないのだ。「付録バブル」に踊っていた消費者が、ふとその夢から覚めたのだ。
 「女性客、目新しさ薄れ」とのサブタイトルもあるが、何よりバブルの夢から覚めたきっかけは東日本大震災にあるようだ。前出の出版科学研究所は<「もともと雑誌は衝動買いが多い。こうした消費行動に震災がブレーキをかけ、付録付きにも影響が及んでいる>と指摘する。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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