モスバーガーが新たにセルフコーヒーショップの「MOSCO」をオープンするという。その勝算はどの程度あるのだろうか。
モスカフェの展開を企業の成長戦略を考える「アンゾフのマトリックス」でみてみよう。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4つだ。
モスカフェで考えれば、「(一部)既存顧客×(大半が)新商品」という、「新商品開発」にあたり、マイケル・ポーターが検証したところによれば成功率の高いパターンである。しかし、MOSCOは「(ほとんどが)新たな顧客層×(ほとんどが)新商品」という、最も成功率の低い「多角化」のパターンだと考えられるのである。
「多角化」のパターンを成功させるには、自社の既存事業とのシナジーが欠かせない。
モスの従来事業とのシナジーという観点でMOSCOを検証すると、意外としっかり狙っていることがわかる。
・生産シナジー=工場設備や原材料の共有
バリューチェーンで考えれば、ショップで用いられる食材は既存のモスやモスカフェ、MOSCOも同じ工場(セントラルキッチン)で作ることができる。ランニングコストの低減に反映できる。
・経営シナジー=人材や経営ノウハウの共有
カフェの運営も人を使うことがキモである。まして、モスはフランチャイズが大半のため、マニュアル化が欠かせない。そのノウハウは十分にある。オペレーションの安定が早期に図られ、ロスを最小化できる。
・投資シナジー=技術特許やブランドの共有
従来のモスに足を運んでいる客以外も立地の利便性で取り込むことを主眼としていると思われるが、それでも「モスバーガー」の名前は知っているだろうし、なにやら「食材のこだわり」だったり、「オーガニック」だったりというキーワードのいくつかはインプットされていると思われる。つまり、それらのブランド資産が活きてきて、名も知らぬ店が通り道に出店する場合より、足を止めさせ店内に引き込む力があるということだ。認知獲得、ブランド構築のための初期投資を抑えることができる。
「MOSCO」が第1号店を成増(東京都板橋区)から展開というのは、モス独特の「実験段階」であることを意味している。モスカフェは1号店は江ノ島であり、ミスタードーナツとのコラボで作られた「モスド」は広島に展開していることからもわかる。しかし、このMOSCO、都市部の顧客ニーズギャップ(低価格・完全禁煙で小休止できるカフェがない!)をしっかりとらえ、シナジーを効かせてローコストオペレーションができるように設計されていることがわかる。
今後、成増から他にどのような所に出現するのか楽しみである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。