7月20日付・日経MJに目を惹く2つの記事が掲載されていた。そこから何が学べるだろうか。
もう1つの注目記事は「雑貨店 20~30代女性向け拡大 ワッツ 若い母親の需要開拓」という記事だ。「ワッツ」は100円ショップ業界第4位の企業である。同社が展開する店舗ブランドの1つ「ブォーナ・ビィータ」は、記事によれば「ピークの04年に14店あったが、採算悪化により新規出店を凍結。不採算店を閉め、一時は6店まで店舗を減らした」とある。復活の転機は取扱品目を見直したことだ。「その後、1000円前後の商品を投入するなど100円商品を主体にした品揃えを見直したところ、収益が徐々に改善。08年から出店を再開し、好調だったため出店拡大に踏み切る」という。
記事にある「20~30代女性」「若い母親」というターゲットのニーズは何なのか。
100円ショップ業界の企業であるワッツが提供していた「100円商品」はニーズを満たす対象物=「ウォンツ」にはなり得ていなかったのである。彼女らに大切なことは、「価格が100円であること」ではなく、「そこそこ安くて、オシャレな雑貨」であることだったのだ。現在、「同雑貨店の平均客単価は1200円程度」というのがその証左である。
同じ100円ショップ業界では業界第2位の「セリア」が従来の100円雑貨を「オシャレな100円雑貨」に絞り込んで「カラーザデイズ」の店舗ブランドを展開し、今年3月にはマルイジャム渋谷店(東京・渋谷)に大型ショップを開いた。全く同じ土俵で勝負してもつぶし合いになるだけだ。ワッツはセリアと同じターゲットを狙いつつ、商品価格の枠を広げ、100円ショップ業界から一歩踏み出すことで生き残りを賭けているのである。
人口減少時代に入った日本。景気に薄明かりが見え始めた矢先に起きた大震災。座しているだけでは市場は縮小し、売上は低下する。そんな環境の中、自らの枠を壊して新たな需要を取り込む試みをはじめたコンビニ&クリーニングと100円ショップの企業事例。これらから学ぶところは大きいだろう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。