7月8日付日本経済新聞にカタログ大手通販会社・千趣会の新展開が報じられた。記事は「千趣会 クリーニング衣料最長8ヶ月保管」というタイトルである。その狙いは何だろうか。
千趣会がサービスに乗り出したのはナゼか。それは、自社の通販顧客に対し利用促進し、一定のサービス利用の確保を見込めるからである。サービスを軌道に乗せるにあたっての難所は、「集客」だ。一定規模があれば、運送、クリーニング、倉庫という各業者にボリュームディスカウントの交渉が可能となる。その結果、手ごろなサービス価格で利用者をさらに増やすという好循環が作れるのである。
衣類のクリーニング・保管サービスのオーケストレーターにはベンチャー企業も挑戦している。元々はベンチャー企業であったデルコンピューターが、オーケストレーターの代表的存在なのでそれは十分可能な話だ。「株式会社クリエイターズ・ラブ」が運営する「dressphile.jp オンラインクローゼット」というサービスは、預けた衣類の画像を管理してくれて、PC上であたかも自分のクローゼットを覗いているような利便性を提供し、差別化を図っている。集客に課題はあるが、消費者のニーズをとらえた取り組みだといえるだろう。
このサービスの中核を担っているクリーニング業者の現状はどうなっているのだろうか。
2010年10月17日のmsn産経ニュースに厳しい現状が掲載されていた。タイトルは「縮むクリーニング市場、ピークの6割減 高機能アイロンは商機」。<2009年に家庭で支出した衣類のクリーニング代は約8000円で、ピークの1992年と比べて約6割減ったことが、総務省の家計調査で分かった。クリーニング市場の規模は推計で約8200億円から約4300億円に縮小、事業者数も減っている>という。さらに、<家計調査によると、2人以上の世帯の09年のクリーニング代は、前年比8.1%減の8131円で、ピークの92年(1万9243円)から17年連続で減少>だという。
単独では衰退していくビジネスも、複合することによって魅力を増すこともある。生き残りのために料金交渉に応じて下請けとなるのか、オーケストレーターとなるのか。それを分けるものは、市場の「未充足ニーズ」に目をこらすことができるか否かであるといえるだろう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。