「メガネの愛眼」は変われるか?~価値構造とKSF~

2011.06.30

営業・マーケティング

「メガネの愛眼」は変われるか?~価値構造とKSF~

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

人はナゼ、眼鏡をかけるのか。目が悪いからだ。近視、遠視、乱視、老眼・・・。では、眼鏡に期待することは何かといえば・・・

 しかし、技術の進歩とファッションの流行が眼鏡の価値構造を変えた。単に「見えるようになる」ではなく「バッチリ見える」はアタリマエ。フィット感も当然の「中核」になった。それにつれて、「付随機能」であった「自分によく似合う」「オシャレ」は、中核を実現するために欠かせない「実体」となり、新たに「頻繁に買い換えて気分が変えられる」「ファッションに合わせて掛け替えられる」という要素が付随機能として求められるようになった。
 そうなると、「商品の品質の良さ」や「丁寧なフィッティング」では差別化ができなくなる。さらに、1度買えば1つの眼鏡を何年も使うのではなく、頻繁に買い換えたり、複数個所有したりするという購買・消費頻度が上がるということは、「規模化」して商品を低価格化できることを意味する。KSFは「顧客のファッションに合うよう、より多くの選択肢を、安価に提供すること」に変化したのである。

 愛眼の新規施策は商品に求められる価値構造の変化と、新たなKSFに対応するためのものである。
 若年層向けの店舗として現在、<団塊ジュニアや若い家族を中心にした「AIGAN」>と、<ヤング向けにファッション性を重視した「SYZ(シーズ)」>を大型ショッピングセンターなどに出店している。その両店を強化するのだ。<低価格商品を拡充するため、部材調達を見直す。仕入れ先を今年度から段階的に集約し、大量調達でコストを削減する方針><門新次官を短縮化するなど接客を簡素化し、回転率を上げる>という方針だという。
 
 記事は<市場ではJINZ(ジンズ)やZoff(ゾフ)など低価格品を主体とする競合店が若年層の需要を取り込み、シェアを伸ばしている。愛眼は苦戦を強いられている「メガネの愛眼」を>減らし、<経営資源を若年層に振り向ける一方、不採算分野からの撤退を急ぎ>営業・最終赤字からの脱却を目指すと結んでいる。
しかし、前述の通り、価値構造で考えれば、一連の変革は競合とようやくおなじスタートラインに立っただけにすぎない。愛眼が勝ち残るためには、USP(Unique Selling Proposition=競合に真似できない自社ならではの提供価値)を明確にしていくことがさらに必要だ。
 価値構造とKSFは、自社を置き去りにして容赦なく変化していく。愛眼がこの後どのような戦いを展開していくかウォッチしながら、この事例を自社に当てはめて見直してみることが大切である。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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