人はナゼ、眼鏡をかけるのか。目が悪いからだ。近視、遠視、乱視、老眼・・・。では、眼鏡に期待することは何かといえば・・・
眼鏡に期待することは何かといえば、まずは「見えるようになること」だ。それがどのような状態で実現されることを期待するかといえば、「そこそこよく見える」程度ではなく、「バッチリよく見える」ようでなければならないし、顔によくフィットする、耳が眼鏡のつるで痛くならないなどの「かけ心地」も重要だ。それが実現された上で、オシャレであるという「ファッション性」や「ブランド」などが求められる。
上記のような、その商品を手に入れることで実現したい中心となる価値を「中核」という。さらに、それがどのように実現できるかという価値を「実体」、さらに中核の実現には直接関係ないが、その魅力を高める要素を「付随機能」という。フィリップ・コトラーの「製品特性分析」というフレームワークである。
6月29日付日経MJに「愛眼、若者向け店舗倍増」という記事が掲載された。<20~30代を中心とする若い世代を対象にした店舗を3年で倍増させる>という。同社は<従来の主力店は高額品に強く、顧客の年齢も高いため、低価格品で若者の需要を掘り起こる競合各社に苦戦を強いられていた>という。
製品の価値構造は時と共に変化する。「眼鏡」というモノの初期段階の姿は、時代劇や漫画で見ることができるだろう。虫眼鏡を2つつなげたような形のレンズとフレームをゴムだかヒモだかで耳に結びつけているアレだ。細かな視度調整などできていそうもなく、かけ心地など望むべくもない。つまり、「中核」の価値しか実現できていないのだ。
技術が進んで、レンズは近視の度数に細かく対応したり、乱視を併発していたりする場合でも対応できるようになった。さらにフレームの形状や材質も向上し、個々人に合わせてフィットさせることができるようになった。「実体」の価値が充実したのだ。
1981年からオンエアされている「メガネは顔の~一部~です~♪」というCMソングは、「愛眼」ではなく同業の「東京メガネ」(←実は東京以外でも流れている)のものであるが、当時から眼鏡は人の個性、オシャレと切り離せなくなった。「付随機能」の充実である。
愛眼は従来<2万円以上の商品を取りそろえ丁寧な問診を徹底>するモデルであったという。眼鏡販売のKSF(Key Success Factor=成功のカギ)は「良い品物を取りそろえることと、丁寧な接客・フィッティング」であったのだ。中核から実体、付随機能までの価値を最適な内容で提供することで顧客満足も高くなり、それなりに高い商品でも買ってもらうことができたのだ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。