ゼンショーの「すき家」「なか卯」で牛丼の値下げが7月5日までの期間限定で始まった。4月から3ヶ月連続で、今回は両店そろって250円の業界最安値レベルで集客を図っている。一方、4月5月には同様に値下げを行い客足を伸ばした吉野家ホールディングスと松屋フーズは現在のところ値下げを表明していない。牛丼戦争は終結するのだろうか。
しかし、「どんぶりの中の戦争」が拡大した「トレーの上の戦争」も、どこかで潮目が変わるはずだ。
食べ物の話ではなく、スーツの話に目を移してみよう。同様に6月27日付日経MJのアパレル欄に「タカキュー “1万円スーツ”半減 3~4万円台充実 実用性高める」という記事が掲載された。
1万円を切るスーツはデフレ下の2007年、西友が親会社ウォルマートの調達力を活かして7980円のスーツを30~50代向けに投入し。その後、リーマンショックによる一層の景気悪化も手伝って消費者のニーズも高まり、流通大手各社や百貨店、紳士服専門店も参戦。アンダー1万円スール市場は激戦化した。しかし、契機に薄明かりが見えた2009年から一転、1万円スーツは売れ残りが出る店も頻出した。代わって格安なパターンオーダースーツが人気を集めはじめたのだ。
既製服中心のタカキューの場合、商機を「機能性」に求めたようだ。「秋冬物はポケットの多さと使いやすさを売り物にする。従来の携帯電話より大きめのスマートフォンの普及や、携帯電話を2台持つ人が増えていることなどに対応し、専用ポケットを設ける」という。価格は「1万円(税抜き)の商品の割合を約8%と前期に比べ約半分程度に減らす。一方、1万9000円(同)のスーツは前期並みの40%程度とし、2万6000円(同)の商品を新たに発売する。3~4万円前後の商品の商品も前期の約30%から約40%に引き上げる」という。
価値を高め、従来の上の価格帯に移行する動きは他店にも見られる。「機能性スーツ」の主戦場は「洗えるスーツ」だ。紳士服量販大手は1万9800円などの2万円を切る価格でしのぎを削る。そこから一線を画そうとしているのが、株式会社オンリーが展開する「THE @ SUPER SUIT STORE」だ。同店は1万9800円、2万9800円で展開する、いわゆる2プライススーツ店だが、パターンオーダーも提供できるのが特徴だ。そして、その得意技を活かして、「洗えるオーダースーツ」を3万8000円(税別)で展開している。2プライスの競合や、量販大手の洗えるスーツより、「オーダー」という強みを活かして1万円高い価格で勝負を賭けているのだ。
紳士スーツに見られる、各社が消費者ニーズを見て、機能を高めたり自社の得意技を使ったりして「安いだけではない」という価値で戦う、業界の「ポケットの中の戦争」。牛丼業界の「どんぶりの中の戦争」は同様に各社が工夫し、戦い方に多様性が出てくるのであろうか。
まずは、吉野家、松屋が追随するかが直近の注目ポイントとなるだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。