メローイエロー&スプライト復活のナゼ?を考える

2011.06.22

営業・マーケティング

メローイエロー&スプライト復活のナゼ?を考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 コカ・コーラシステムのニュースリリース(6月21日付)によると、<1980年代に人気を博した炭酸飲料として、シトラス系のフレーバーでなめらかな味わい、そしてほどよい炭酸が心地よい「メローイエロー」を2011年6月27日(月)より、そしてクリアで爽快な飲み口、キレのあるレモンライムテイストと強炭酸が特長の「スプライト」を2011年7月25日(月)より、それぞれ全国で発売>するという。

 飲料業界第1位のコカ・コーラの力の源泉は日本に設置された飲料自販機、約290万台のうち98万台を保有しているというカバレッジの広さだ。自社で自由に製品を置くことができる自販機の特長を活かして、日本コカ・コーラはコーヒー、ミネラルウォーターや茶系飲料、清涼飲料とバランス良くオールラインナップを揃えている。赤い自販機にずらりと揃ったその商品の彩りは、他社に比べ圧倒的に美しくすらある。
 そんな日本コカ・コーラにとって、1商品をリバイバルさせたり、現行商品のパッケージをレトロ調にしたりということは、全体戦略にとって本来あまり意味はない。商品はあくまで、自販機の中で「面」を構成する1要素であるからだ。

日本コカ・コーラが今回のリバイバルを決めた背景の1つは「自販機の節電」ではないだろうか。
 <清涼飲料各社が今夏、東京電力管内にある自動販売機を対象に、時間をずらしながら冷却機能を止める輪番節電に取り組む。最大手の日本コカ・コーラは15日、6月下旬から約25万台で実施すると発表した>(4月15日日本経済新聞)
 自販機は従来から節電対策として電力ピーク時の13時から16時までは冷却運転を止めていたが、さらにその前後で冷却停止時間を延長する。そのため、最大で6時間冷却が止まる自販機も出る。実際上、自販機は断熱性が高いため、商品温度に大きな影響はないとされているが、買う側の気持ちとしては節電で暑さが身にしみる中、少しでも冷え冷えの飲料を求めたくなる。となると、自販機での購入を忌避する動きも出てくるかもしれない。
 日本コカ・コーラは業界の中でいち早く「他社よりも高い33%の節電を行う」と発表をしている。その一方で、コンビニという販路の重要性が増しているのだ。

 コンビニだ。飲料の販売チャネルにおいてその重要性はどんどん増しており、飲料全体における自販機の販売シェアはかつて50%台だったのに対し35%に低下。コンビニは25%と自販機に迫る勢いとなっている。
 「面」の自販機に対して、コンビニは飲料棚フェイスを獲得する「点」の戦いだ。1つ1つの商品力が求められる。また、話題に乗り遅れ、売れなくなった商品は容赦なく棚から外される。そんな「単品勝負」の厳しいコンビニの売り場でまず求められるのは、話題になる商品、手に取って買ってもらえる商品だ。そうした商品を用意してプレゼンスを発揮してこそ、定番のコカ・コーラや爽健美茶という安定した売上を作り出す商品に加えて、今後新しく発売する商品の棚も確保してもらえるというものだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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