ロッテリアが店舗の大型化と大規模出店に舵を切るという。狙いはどこにあるのか。また、その戦略を可能としている背景は何だろうか。
6月12日付日経MJに「ロッテリア 新店舗、面積1.5倍に 売上高3割増 都市部に出店攻勢」という見出しが掲載された。同記事によれば、<この10年間は不採算店舗の閉鎖を優先し、毎期40~50店を閉めてきた。その結果、現在はピークの半分以下の約450店まで減っている>という。
記事の示す10年ではなく、もう少し遡ってロッテリアの四半世紀を考えてみると、ハンバーガー業界の強大なるコストリーダー、日本マクドナルドに挑戦し続けた歴史であるといえるだろう。1987年にマクドナルドがハンバーガーとドリンク、ポテトが390円の「サンキューセット」を発売し、ロッテリアはそれに対抗して「サンパチトリオ」を発売。バブルが崩壊しデフレ時代に突入すると、マクドナルドは94年に「バリューセット」を発売。2000年には「平日半額キャンペーン」130円のハンバーガーを65円にするなどの低価格攻勢を展開、ロッテリアも追随した。
結局の所、両社の安値対抗はどちらにも幸せをもたらさなかった。日本マクドナルドは。2002年に創業以来初の赤字決算を計上し、藤田田社長が引責辞任。現在の米国マクドナルドの直轄・原田泳幸会長兼社長体制で低下したブランドイメージと財務体質の再建が行われた。ロッテリアも経営不振に陥り、2005年から2010年まで、企業再生会社リヴァンプと資本提携し、経営再建を行うこととなったのである。
それにしても、報道されている方針は大胆だ。店舗規模1.5倍。<店舗を大きくすれば家賃負担も増えるが、「ここ数年で、単価の高いえびバーガーや絶品チーズバーガーなどの商品が収益源に育ってきた」(同社)ことから吸収できると判断した>という。「売上=客数×客単価」である。客単価が向上してきたため、客席数を増やしさらなる売上増を目指そうという狙いだ。しかし、「利益=売上-コスト」だ。本当にコスト吸収ができるのだろうか。
「利益」と「コスト」に関してもう少し詳細に考えてみよう。
「限界利益」という考え方がある。売上高から、変動費(材料費、人件費など)だけを差し引いた利益のことで、「限界利益=売上高-変動費」となる。「人件費」「原材料費」は「変動費」である。限界利益は固定費を賄うための利益で、ここでは大雑把に「固定費」である「地代家賃」のことを念頭に置こう。
「限界利益」がわかると損益分岐点の算出ができる。利益と損失が分岐する点(BEP=Break Even Point)だ。「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」なので、損益分岐点比率が低く収益性が高い状態。売上が少なくとも耐えられる構造には固定費の低さが大きなポイントであることがわかる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。