夏の暑さと梅雨寒が交互にやってくる天候の中、夏の電力不足対策の一環として環境省が提唱する「スーパークールビズ」が始まった。出揃った紳士服大手各社の品揃えのなかから、青山商事とはるやま商事の戦略に注目してみよう。
6月8日付日経MJ。題字下のINDEXには<「涼しさ」を売る>として、<毎年、涼しさや軽やかさ、清潔さを競ってきた紳士服専門店。今年は一段とカジュアル化が進む見通しで、商品開発や販促戦術の脱皮が迫られている>とある。記事紳士服大手各社の目玉がレポートされている。<クールビズを意識して今夏に衣料品を購入する予定の人は51.9%。予算は1万6915円だった。この予算の争奪戦が激しくなる>ともある。
ビジネスマンの仕事着といえばスーツにネクタイが基本。略式でもワイシャツ姿というスタイルを崩すのは容易ではない。のっぴきならない「節電対応」という非常事態の中、「暑いのはイヤだけど、崩しすぎるのはちょっと・・・」という切なさは、「スーパークールビズ」という突き抜けた爽やかさより、「節電ビズ」という、どこか切なげな表現の方がしっくりくる。
そんな、「密やかな涼しさ」を求める御仁には、青山商事が柱として掲げる「清涼スーツ」がオススメだ。年々機能強化しているという商品であるが、今年はついに<従来品より通気量が5倍という新商品>を投入してきた。<「服の中に熱がたまるから暑い。風通しがよければ涼しい」>という同社担当者のコメントは説得力たっぷりである。
説得力ある言葉に触れ、試着をしてみればさらに納得かもしれないが、まずは商品を手に取らせるところがキモでもある。その点抜かりがないのが、はるやま商事だ。同社が展開する「パーフェクトスーツファクトリー」の商品にはわかりやすいタグが付けられているという。「COOL LEVEL1」「COOOL LEVEL2」「COOOOL LEVEL3」「COOOOOL LEVEL4」。<衣料品を着たときの涼しさや、周りにも涼しい印象を与えるかを独自に判断し、4段階に分類した「クール指数」>だという。「O」の文字とLEVELが増えるほど涼しいことを「見える化」しているのである。はるやま商事のうまいのは、青山商事が「通気量」というスペック、「機能的価値」を訴求しているのに対し、涼しさの指数を見える化することによって「情緒的価値」に訴えているところである。
しかし、青山商事も負けてはいない。はるやま商事が提唱する「涼しい印象を周りに与える」ことまで求められるのは、冷房もままならない今年のオフィスではいささか酷にも思える。だが、オフィスの同僚以上に着る本人だけでない「購買決定関与者」、マーケティング的にいえば「DMU(Decision Making Unit)」のココロをつかみそうな商品が青山商事にもあるのだ。同紙の別記事、コラム「ヒットのヒミツ」に紹介されている「ノンアイロンマックスクール」だ。<風通しを通常のシャツの3倍以上にした>というだけではない。ポイントは「シワ防止」である。商品のポイントは、従来<洗濯後にシワがなくなる割合「シワカット率」が50%程度だったが、同シリーズは90%以上>だという。<アイロンがけは嫌いな家事の1位という調査もあり、アイロンがけの手間が省け、クリーニング代も節約できる店を強調>しているという。前掲の「スーパークールビズ予算1万6915円」はイニシャルコストだ。ランニングコストと家事省力化に着眼しているのはDMUのハートに響く。<夫のシャツを洗濯したりアイロンがけしたりする女性からの指名買いも多い>という。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。