東京タワー。正式名称は「日本電波塔」。高さ333メートルの偉容を誇っていたが、634メートル・自立式電波塔として世界一位となったスカイツリーに、日本一の座も明け渡した。しかし、その後も存在感を示し続けるプロジェクトが進行しているという。
6月6日付日経MJに「東京タワー、地方情報発信 」という記事が掲載された。「自治体とPRイベント」とサブタイトルがある。「東京タワーを運営する日本電波塔(東京・港)はここ数年、地方と連携した情報発信の取り組みに力を入れている」とのことである。
背景としては、当然強力なライバルである「スカイツリー」の存在がある。来年の5月22日には地上450メートルの展望施設などの開業を迎える。それに対する切り札が、「地方との連携・情報発信」なのだ。
東京タワーを情報発信拠点とするメリットは、地方にとっては小さくない。各地方は東京駅や有楽町などを中心として各々アンテナショップを展開している。しかし、それらすべてが良好な立地にあるとは言いがたい。その点、東京タワーは認知度抜群だ。東京タワーを見たことがない人はいない。場所は多くの人が知っているし、知らなくとも人に聞けばすぐわかる。聞いたこともない雑居ビルの一室にアンテナショップを構えているのとは大きな違いである。
しかし、大きな課題がある。そもそも、「誰に来てもらうのか?」という点だ。
東京観光の定番スポットとして来場してくれている修学旅行生などの観光客は、日本一、世界一になった新たなスポットであるスカイツリーに吸引されていく。現状より集客力が落ちることは間違いない。
では、誰を集客するのか。それは、観光バスに乗ってやってくる観光客ではなく、東京及び近隣在住者ということになるだろう。とすると、そこに第二のハードルが存在する。来塔者が2009年に通算1億6000万人を記録したとはいえ、その多くは地方からの観光客だ。東京及び周辺在住者は生まれて一度も東京タワーに来たこと、登ったことがない人が少なくない。
最大の課題は「東京タワーに来る理由」を提示することができるのか否かだ。正直なところ、東京タワーは眺めるにはいいが、訪れる理由としては「日本一」という要素以外、あまり魅力的ではなかった。付帯の水族館や蝋人形館も含めて。都バスに乗って、もしくは最寄りの東京メトロ・神谷町、都営地下鉄・御成門からそんなに近くない距離を歩いてわざわざ訪れる理由が今まではなかったのだ。
日経MJの記事では最近の催事の例が挙げられている。「“日本源泉掛け流し温泉協会”の設立イベント&一般向け催事」「大阪市の映画タイアップイベント」「銚子市の特産品・メロンの展示即売会」などなどだ。そうした催事の魅力を高める企画力が求められる。商品力を上げるのだ。いかに知らしめるかも課題となる。
さらに、入れ替わりで次々と開催される催事には、一度来場してもらえればいいわけではない。「一度は東京タワーに登ってみよう」というモチベーションの比ではない頻度での来場を促す必要がある。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。