「落穂拾い」「晩鐘」「種まく人」などの作品で有名なバルビゾン派の画家・ミレーは「人を感動させるためには、まず自らが感動しなければならない」と言った。
■社内ファンの力
特筆すべきは、マーケティング要諦である「整合性」だ。そして、その整合性を生み出しているのは、「堅あげポテト」を支えようとする「社内ファン」の力に負うところが大きい。
「開発・マーケティング→生産→物流→営業・販売」という一連のバリューチェーンでは商品価値を市場に伝えるという目的で整合している。
開発・マーケティング=自ら価値の再定義しコンセプトを確立させる。
生産=生産効率が悪く、体制も整っていない状況でも粘り強く生産する。
物流=生産と市場ニーズのアンマッチが起こると、他エリアから在庫を融通するなどの機動性を発揮する。
営業・販売=いかに手に取って体験してもらうかを考え、試食の機会を作り出す工夫を行う。
マーケティングミックスの「4P」でも、商品価値を高め、保つことで整合している。
商品(Product)=フレーバーを思いつきで増やしたり、消費者調査だけでパッケージを安易に変えたりしない。
価格(Price)=価格訴求でなく価値訴求商品として認知いただけるよう販売チャネルへの働きかけをしっかりとして、ブランド価値を維持する。
販路(Place)=営業が販売チャネルの棚を確実に押さえる努力を惜しまない。
プロモーション(Promotion)=「食べればわかる」という当初のコンセプトを確実に体現するため、地道なサンプリングを重ねる。
「私たちは、“ポテトチップスの1つのブランド”を作るのではなく、“堅あげポテト”というブランドを作りたかったのです」と、担当者は語る。
「新しい価値」を追求し、作り出した商品に誰よりも社内の各部門で関わる社員がファンになり、「わかる人にはわかってもらえる」ということを確信して、各々が各々のポジションで地道な努力を重ねた。
10年以上にわたって売れ続けているロングセラー商品、カルビー「堅あげポテト」。そのヒットの陰には、カルビーの社内ファンの活動があったわけだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。