5月11日付日経新聞に掲載された2つの記事。そこには変化の激しい昨今の環境の中で模索する企業の姿が描かれていた。そこから学ぶべきことは何だろうか。
同日の日経にもう1つ注目したい記事がある。「電動バイクを給油所で販売 伊藤忠エネクス」。
伊藤忠系のガソリンスタンドを通じ、台湾製の電動バイク(バイクといっても、写真を見ると小型スクーターの大きさだ)を来年3月までに700店で取り扱い、初年度に2000台の販売を目指すとある。
パン屋さんはパンを売る。スタバはコーヒーを売る。そして、ガソリンスタンドはガソリンを売るのが仕事だ。基本は。しかし、電動バイクはガソリンではなく、電気で動く。本来はそんなモノを売っても商売にはならない。
筆者は四半世紀も前にガソリンスタンド関連の業務に携わったことがあるが、その頃からテーマは「油外強化」だった。つまり、「低収益なガソリン販売以外を強化すること」である。具体的には整備、洗車、タイヤ交換などである。四半世紀の間に自動車の燃費性能はどんどん向上し、顧客の来店頻度は低下した。若年層をはじめとして「クルマ離れ」も進んで顧客数も減少。まさにジリ貧である。そこに、ガソリンを使わない電気自動車(EV)という新たな脅威が襲来してきたのだ。
脅威は見方を変えれば機会になる。「ピンチをチャンスに!」というヤツだ。みんながガソリンを必要としないなら、売らなければいい。しかし、車が走り続けるために必要なメンテナンスや消耗品の販売にビジネスを転換すればいい。そのための格好の練習台が「電動バイク」なのだ。
記事には同社の狙いが述べられている。「電気自動車(EV)の普及をにらみ、整備や充電の支援のノウハウも蓄積し、ガソリンなどの燃料販売以外の収益源を広げる」とある。
環境の変化に対して既存のビジネスのしくみにとらわれることなく、自社のビジネスモデルを切り替えていく。その重要性を示唆してくれている。
筆者の座右の銘は、読み人知らずであるが、「今日は昨日の続きでも、明日は今日の続きではない」だ。今回のアスクルと、伊藤忠系列の取り組みは、今日と異なる明日を切り開くための展開であることは間違いない。その成果に期待したい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。