ユニクロが「駅前・平屋型」という新型店舗の展開をはじめた。その狙いはどこにあるのだろうか。
4月25日付日経MJの記事に「出店形態を多様化 ユニクロ、駅前に平屋店舗」という記事が掲載された。写真には開店準備中と思われる店舗が映っており、「ユニクロは鉄道会社と組み好立地への出店を進める(五反田駅前の店舗)」とある。
今日、エキナカはユニクロの「牙城」の重要な一角である。ユニクロがエキナカ進出をはじめたのは2000年のこと。JR東日本・東日本キヨスク(現JR東日本リテールネット)と業務提携し、「ユニクロキヨスク新宿南口店」をオープンした。以来10年を超え、あちこちのJR各駅の改札内外で見かけるようになり、昨年12月9日に飯田橋駅にもオープンし、東京メトロ、地下鉄にもその版図を広げたのである。
ユニクロの春夏の戦略商品は、機能性インナー:男性用「シルキードライ」と女性用「サラファイン」及び補整機能付の「スタイルアップ」だ。合計販売目標は3600万枚。それに対して、イオン、イトーヨーカドー、ユニーなども追撃するが、合計しても目標は2,230万枚だという。(DFオンライン http://www.dfonline.jp/dist/flash/#57 )
3社を合計しても目標枚数はユニクロになお1,270万枚届かない。ユニクロ、余裕しゃくしゃくの状態を生み出している理由の1つが「販売チャネルの優位性」だ。
日経MJの記事によれば、「21日には機能性肌着の“サラファイン”と“シルキードライ”のみを取り扱う専用店を初めてJR池袋駅構内にオープンした。6月26日までの期間限定。5万着の販売を目指す」と伝えられている。冬にJR品川駅に特設された「ヒートテック専用ショップ」と同様の展開を行っているのである。3600万枚の販売という途方もない目標は、イオン、イトーヨーカドー、ユニーなどと同等の枚数を大型店やSC店舗で販売し、残りを消費者の生活動線と購買時点に即した販売でたたき出そうとしているのだろう。
エキナカのターゲットは、通勤・通学客だ。暑くなってきて、涼しい下着が欲しくなるのは通勤・通学途中、職場や学校だ。そのニーズが最も高まった時点にエキナカ・駅前店舗を配置する。まだ買ったことがない消費者の試し買いも、既購入者の買い増しも機会損失をする恐れが最も少ない販売チャネルであるといえよう。大型店やSC店舗とのターゲットの棲み分けを図ることもできる。常態化した「週末限定セール」で各店はごった返し、レジに行列ができる。その中に身を置くことを嫌う層も少なくない。しかし、高機能インナーは欲しい。そこで、エキナカ・駅前店舗が効力を発揮する。
機能性インナーに注目すれば、ユニクロは強大なリーダー企業である。シェアの高いリーダーは、できるだけ価格で戦いたくない。事実、ユニクロの機能性インナーは、イオン、イトーヨーカドー、ユニーの商品に比べると若干値段が高い。しかし、上記ターゲットは利便性を求めるため、「週末限定」を待って購買するような行動はとらない。インナーだけでなく、商品を必要な時に「都度買い」する。そうした点もユニクロにとってはオイシイのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。