JR東日本のエキナカ自販機に、この春ユニークな商品が登場する。それはどのように企画されたのだろうか。
JR東日本のエキナカ自販機、約1万台を運営するJR東日本ウォータービジネスはちょっとユニークな会社だといえる。同社は保有する自動販売機にacure(アキュア)というブランド名を付けている。その最大の特徴は、各飲料メーカーの商品をごちゃ混ぜ、つまり混載して販売していることだ。
日本全国に約240万台設置されているといわれる自販機は、飲料メーカーにとっては貴重な販売チャネルである。自社ブランドで展開する自販機には、コンビニなどの流通で扱ってもらえないような自社商品も自由に置くことができる。あとは、好立地さえ確保すれば売れていく。いわば、「売り手視点」のビジネスであるといえる。
そんな自販機ビジネスの環境に対し、「自販機イノベーション」というコンセプトを掲げているのがJR東日本ウォータービジネスなのだ。消費者が手を伸ばして買いたくなるような商品を、自販機に並べて売るために、自販機をメーカー系列の持ち込みではなく自社保有する。各飲料メーカーから商品を選んで並べるだけでなく、伊藤園と共同開発した緑茶飲料「朝の茶事」やアサヒ飲料との共同開発による「ワンダ朝のカフェオレ」などのエキナカ限定商品も作ってもいるのである。
同社の最も強力な武器は「情報」である。現在約40台設置されている「次世代自販機」(写真)には、センサーが搭載され、「どんな人(性別・年代)が、いつ、何を買ったのか」が把握できる。また、suicaの個人情報に関わらない性別などの属性データも、カードリーダー・ライターを搭載した3,000台の自販機から収集している。それに対して、一般の多くの自販機は単なる「冷蔵庫」のようなものだといえる。「何が、いくつ売れたか」を知ることはできる。しかし、「誰」どころか「いつ」という時間データも取得できない機種がほとんどなのである。その情報取得能力の差は大きい。
同社の「情報収集機能」を持った自販機からあるデータが抽出された。「果汁飲料カテゴリー」の商品の時系列販売データだ。(同社ニュースリリースを加工)
次なる課題は、取得した情報をどのように活かすかだ。
データを見ると、果汁飲料カテゴリーの商品は夕方に販売のピークがあることがわかる。同社はその消費者の購買行動を「小腹満たし需要」ではないかと読んだ。面白いことに同じ「果汁飲料」であるにもかかわらず、「ポンジュース」は動きが異なる。ピークは「朝」なのだ。それは「ポンジュース」というブランドが作り上げたのか、「みかん」という果実の摂られかたなのかはわからないが、「お目覚め需要」ともいうべきものがあるのは確かなようだ。もう1つ、昨年秋に発売された「青森りんご贅沢ゼリー」というペット容器入りゼリー飲料の動きが特徴的だった。突出して夕方の需要が高いのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。