サントリーの「天然水」がリニューアルされ、交通広告などでも印象的なペットボトルのビジュアルが告知されている。そして、多くの人は思ったはずだ。「アレと一緒じゃん?」と・・・。
強烈に追い上げてくるチャレンジャー、コカ・コーラの「いろはす」に対して、サントリー「天然水」が「同質化戦略」をとったように思われる。ただ、そっくり同じにするだけではない。「ecoるボトル しぼる」に対して、もっと覚えやすい「P-ecot(ペコッと)ボトル」というネーミング。絞ったボトルと同等以上にコンパクトに見えるきれいにたたまれたボトルのイメージ。そして、「いろはす」の520mlを上回る、550mlという増量サイズである。
コカ・コーラはどうするのか。果たして、「いろはす」も「天然水」と同等以上の製品改良を行った。「天然水」のPET容器の重量は13.5g。新しい「いろはす」は、さらに軽量の12g。容量は5ml多い555mlである。
ところが、この戦いは時系列に整理すると、全く攻守が逆転した様相となるのである。
サントリーが「天然水」のリニューアルを発表したのが、2010年12月20日。
「サントリー天然水」550ml新発売― 新開発の“P-ecot(ペコッと)ボトル”を採用 ―
http://www.suntory.co.jp/news/2010/10963.html
対して、コカ・コーラが「いろはす」のリニューアルを発表したのは2011年3月3日のことだ。
『い・ろ・は・す(I LOHAS)』 555ml PET発売― 2011年3月14日(月)から全国で発売開始 ―
http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_20110303.html
「ミネラルウォーター市場」では、リーダーのサントリーも、「飲料業界」全体で見れば、販売シェアも自販機の保有台数もコカ・コーラに劣後している。リーダーはコカ・コーラの方なのだ。
「チャレンジャー」は「リーダー」に対して、とにかく違いを明確にする「差別化戦略」を行う。それに対して、リーダーは「同質化戦略」を仕掛ける。サントリーが「天然水」のリニューアルを発表してから、コカ・コーラが「いろはす」のリニューアルを発表するまでわずか2ヶ月半。PET容器の界初などの準備はしていたものと思われるが、恐ろしいまでの勢いで「同質化」を仕掛けたのはコカ・コーラの方だったのだ。
「市場」や「業界」は、その切り取り方によって見えてくる様相が異なってくる。また、時間軸で考えれば、戦略の有効性も全く異なってくる。仕掛け、仕掛けられ、差別化し、同質化するという戦いに永遠に終わりはない。だが、その時々の戦局で有効な手立てを撃たなければ、致命傷を負うこともありえる。常に危機感を持って戦いの望むことが求められるのである。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。