女性ファッション雑誌に対する消費者行動は、 1 自分で買って読む人 2 自分では買わず、美容院等で読む人、書店立ち読み人 3 そもそもまったく読まない人 に大きく分けることができます。
以上のことから、女性誌を買う人、買わない人でその消費性向の格差が近年ますます広がっているのではないかと思うのです。
もうひとつ、女性誌自体の変化もあります。30年にわたって女性誌を研究している、日本大学教授、仲川秀樹氏によれば、
“70年代から80年代にかけては、女性誌はファッションの 参考書のようあものでした。読者は女性誌が提案する世界観に憧れを抱き、そのスタイルを日々のコーディネイトの参考にしていました。”
(中略)
“しかし、95年以降、雑誌が細かく分化し、それぞれが独自のスタイルを提案するようになっていきます。すると、読者は自分の趣向と位置する雑誌に登場するモデルを理想として、彼女たちが身につけている洋服を店頭で指名買いすることも増えました。”
“女性誌が提案するファッションがよりリアルになったことで、雑誌の講読と商品の購入がより直接的につながったといえます。”
実際、女性誌に限りませんが、紙媒体がある種、「通販カタログ」化する傾向が見えていますね。ですから、女性誌は、ますます「消費する気のある人」のためのメディアになっているわけです。前述したように、最終的には自社製品を買ってもらいたい広告主たる企業にとっては大変効率が良いメディアであると言えるのではないでしょうか。
とはいえ、現実には女性誌の多くは、広告収益の持続な低下に苦しんでいます。この不振の原因は、ひとつには、ご紹介した調査のような形で女性誌の媒体価値を明確に示せてこなかったことがあります。
もう一つは、広告主・広告会社側としては、さまざまな媒体の特性を比較検討してメディアミックス、ビークルミックスを行ないたいにも関わらず、個別媒体間の相対比較(実売部数とかだけでなく、今回のような定性寄りのデータも含めた)ができないことがあります。
実は、媒体側(出版社)としては、こうした相対比較が行なわれることに対して躊躇しているというか、抵抗があるのです。「(うちはうち)他と比べられたくない」という意識がある。しかし、そのことが結局、自分たちの首を絞めているのです。
ファッションのネット販売の雄、「ZOZOTOWN」が女性に大人気となり、急成長している背景には、多様なファッションブランドの仕様や写真をそのまま利用するのではなく、ZOZOTOWN独自の基準に基づいて、データを整備し、横串で「比較検討」できるようにしている点にあることを、女性誌業界の人たちも学ぶべきかもしれません。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。