~続・雑誌「BIG ISSUE」の売り子にもらったもの~
もっと自分のことを話すのか。聞いて欲しいのかと思ったが、話はそれで終わりだった。いや、話したかったというふうではなかった。少し昔を思い出したことが、口から出たというような話し方だった。
筆者は一旦その場を去って、再び戻り、彼にレジ袋を差し出した。近くの果実店で買い求めたバナナ四本と蜜柑一山。合計500円だった。現金を渡したのでは、商売をしている彼に失礼だ。かといって、何かできないかと思案した結果の代物だ。それでも恐らく、差し出す筆者の姿はひどくおずおずとした様だっただろう。
「ありがとうございます!遠慮なく!」
思案したのは全くの無駄であった。彼はいつもの人なつこく、クリクリした目を輝かせて躊躇なくレジ袋を受け取った。
決して、ちょうど空腹であったからとか、「タダでもらえるものならば」といった様子ではない。かといって、差し出されたので義理で受け取るという風情でもない。
人の好意に感謝して素直に受け取る。その表現が最も適切に彼の反応を表現する言葉であるはずだ。
思えば、自分自身が人に対してそんな応え方をいつしただろうか。
「いやぁ、いいですよ~」。
「本当ですかぁ~、いいのに・・・。スミマセンねぇ・・・。」
また一つ、大切なことを彼から思い出させてもらった。
■前回記事「雑誌「BIG ISSUE」の売り子にもらったもの→ http://www.insightnow.jp/article/6003
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2015.07.17
2009.10.31
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。