コンビニの売り場に学ぶ「顧客は誰か」?

2010.12.21

営業・マーケティング

コンビニの売り場に学ぶ「顧客は誰か」?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 コンビニエンスストアの棚。日々、消費者は何気なくそこを眺め、商品を手に取っている。しかし、その裏側では壮絶な戦いが繰り広げられているのである。

 笠原氏の記事で同様に意義深いものをもう一つ紹介しよう。
 「チルドカップコーヒーの定番、マウントレーニアが強いワケ」(Business Media誠・12月8日)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1012/08/news008.html

 プラや紙のカップ、アルミ箔の蓋、側面にストローが貼付けてある「チルドカップ」の飲料。コンビニの店頭では、紙パック飲料の近辺にプリンやゼリーと共に棚が形成されている。
上記記事では、カテゴリートップの「マウントレーニア」(森永乳業)と、チャレンジャー「スターバックス」(サントリー食品)の戦いとなっているが、2ページ目のグラフでは「ドトールコーヒー」(オハヨー乳業)の伸びに目がいってしまうので注意が必要だ。重要な論旨はグラフではなく、「マウントレーニアはなぜ強いのか」というポイントだ。記事の解説によれば、<通常のチルドカップコーヒーだと約1週間程度のところ、マウントレーニアは約1カ月間もある。これはアセプティックカップという長期保存に向いた容器を使っていることに加えて、無菌充填を行っていることによるものである>という点だ。
 長期保存できると誰がうれしいのか。コンビニでチルドの飲料を買って帰って、自宅の冷蔵庫で長期保存する人はほとんどいない。すぐ飲んでしまう。うれしいのは、コンビニ。店側だ。ナゼなら、期限内に売れずに廃棄することになるリスクが低減できるからだ。

 伊藤園の新製品、「輝くオトコのGOLDEN GUYサイダー」。「ジンジャー×ウコン」で、さらにアミノ酸のオリルニチン、アラニン、アルギニンまで入ったてんこ盛りの飲料だ。何よりその商品名とギラギラしたパッケージが目を惹く。
 ちょっと手を出すのをためらってしまいそうな飲料だが、「新発売」のPOPが付いて、しっかり棚のフェイスを複数確保している。コンビニが「売ろう」という意図の表れだ。
 この飲料に限らず、コンビニは新発売の飲料には力を入れる。ナゼか。
 第1回目の配荷分は、マージン率が高いのだ。メーカーが「売って欲しい」から。である。そのため、棚のフェイスを複数確保することができるのだ。

 上記、一連のコンビニエンスストア関連のエピソードのポイントは、「メーカーにとっては、販売チャネルも“顧客”である」ということだ。メーカーの人間なら当たり前なことだが、そうでないと、つい最終消費者(エンドユーザー)のことだけを考えてしまう。
 もう一つのポイントは、「DMU」という考え方だ。DMU(Decision Making Unit)とは直訳すると「購買決定単位」となるが、「購買決定関与者」と考えればいい。商品の購買に誰がどのような関心事を持って関わってくるのかということだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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