ハンバーガーチェーンのフレッシュネスバーガーが、自社ブランドロゴ入りの生活雑貨を店舗で販売するという。フード業界からの「ライフスタイル事業」へのドメイン拡張ともいえるが、その戦略は伸るのか、反るのか。
フレッシュネスバーガーの展開は、自社ブランドに囲い込んだ顧客に新商品を提供する「新製品開発」にあたる。マイケル・ポーターによれば、成長戦略としては、既存製品の使用用途を拡大したり、使用機会を増大させる提案をしたりする「市場深耕」が最も手堅く、その次が「新製品開発」であるという。そのココロは、どちらも既存顧客を相手にするため、ニーズも把握しやすくカン所がわかるからだ。その意味では、フレッシュネスバーガーの戦略は間違っていないといえる。
しかし、別の見方をすれば少々危うい気もする。
「ドメイン(domain)」という考え方がある。直訳すれば「領地・領土」のことだ。ビジネスにおいては、企業が戦う「土俵」を現わす。自らが有利に戦える土俵を選ぶことが戦略の基本である。また、何らかの時流の変化を捉え、有利な土俵を構築することも重要だ。
マクドナルドのドメインは、フレッシュネスバーガーと同じ「ハンバーガーレストラン市場」である。そこで十分な領地(シェア)を既に獲得しているため、「1000円以内のカジュアルな外食市場」にドメイン(戦いの土俵)を拡張している。ファミレスその他、低価格帯の外食の市場規模は8兆円。そこをどれだけ取り込めるかという戦いを展開している。
フレッシュネスバーガーはマクドナルドをはじめとする、上位チェーンとの競合しない収益源を求めて「生活雑貨市場」、もしくは「ライフスタイル事業」にドメインを拡張した。そこで成功する論拠としては、「携帯会員向けのロゴ入りエコバッグなどのプレゼントが好評だったから」ということになる。
「フレッシュネスファンが増えている」ということから考えれば、ロゴ入り商品の販売は受入れられるかもしれない。ハンバーガーではなく、ブランドとしてのコンセプトである「オーガニック&ナチュラル」なグッズを販売するのは、「関連商品の販売」を意味する「クロスセリング」にあたる。そこで1割の売上げ増を狙うという戦略は1つの選択肢ではある。
しかし、それを買うのは非常にコアなファンではないだろうか。なぜなら、プレゼントとして「もらう」と「買う」のは大きな違いがあるからだ。また、生活雑貨をあえてフレッシュネスバーガーで購入しようというKBF(Key Buying Factor=購入要因)となるまでに、同社ブランドがパワーを持っているかが問われる。
もし販売をしないのであれば、オリジナルグッズを商品購入額に応じてポイントを蓄積して交換するミスタードーナツと同様な展開も考えられる。ミスドの売り物はあくまでドーナツ。グッズは販売しない。お金を出しても買えないからこそ、プレゼントほしさにドーナツを食べに来てポイントをためる人も少なくない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。