業績不振に悩み続ける百貨店業界。「ネット流」の新しい動きが見え始めたというが、どうにも「ビミョー」なのだ。そうこうしているうちに、他業態にお株を奪われつつある観もある。
記事の引用「ネットは検索キーワードを入れるだけで瞬時に売れ筋がわかる」と前掲したが、「検索」は能動的な行動だ。電通総研・四元部長が記事で消費者を取りまく情報量の飛躍的増加によって、ランキングやその分野の「カリスマ」の意見に頼る消費者が増えているのではないか」という主旨の指摘をしている。ランキングを見ることや、カリスマにオススメされることは「受動」だ。「カリスマのオススメ」は、若年層に人気のセレクトショップなどでは当たり前。顧客はそれを求めて来店する。店側としては、その巧拙が売上げを左右する。その意味では、消費者と店舗は相互依存の関係にあるといえる。
東京立川市の高島屋立川店。同店は2007年から「お声がけを控えるおもてなし」として、「S.E.Eカード」という施策を開始した。来店客が入り口でストラップ付きのカードを受け取り首からかけておくと、全ての販売員があいさつ以外、顧客の要望があるまで声がけを控えるというものだ。当然、何のオススメもされない。
百貨店の接客の基本は「動的待機」だ。顧客にプレッシャーを与えないように、顧客が何か質問などをしたそうな気配を見せるまで、商品の整理などの作業・動作をしながら待機するのである。じっと見つめたり、むやみに声をかけたりするのではない。しかし、あえて「お声がけを控えるおもてなし」とするのは、そうした接客スキルが百貨店から失われてしまったことを意味するものとも考えられる。
印象的なのが、前出の日経記事にある大丸の来店客である女性のコメントだ。「百貨店は商品がたくさんありすぎて、どれがいいかわからない」という。「たくさんありすぎる」くらいに商品があるから「百貨店」というのが当たり前だが、それは困るということのようだ。
専門店が接客に力を入れ、売上げを伸ばす一方、百貨店の店頭では来店客がたくさんの品物の中から目当てを選ぶことができずに迷う。百貨店自身はネット流のランキング表示と接客禁止を模索する。
ランキングは、いわゆる「売れ筋」であり、必ずしも「その顧客が欲しているもの」ではない。ネットには顧客の購買履歴や属性データを参照したオススメの手法もあるが、顧客を見てオススメすることは、本来百貨店の十八番のはずだ。「百貨店のネット化」は、百貨店にとっても顧客にとっても、幸せなことではないように思う。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。