バンズから大きくはみ出したパティ代わりの肉が大迫力を醸し出す、ロッテリアの『はみだしステーキバーガー』。いい肉(1129)の日である11月29日に期間限定で発売が開始された。一体、何を目指しているのだろう。
ロッテリアは何を目指しているのか。「はみだしステーキバーガー」のリリースを見ると、そこにヒントが隠されていた。
今年のスローガンは「ひと手間がんばる、ロッテリア」。<お買い求めやすさはそのままに、食材の手配、キッチンでの調理、お客様へのサービスにも、"ひと手間"加えることにより、もっとおいしく、高品質で、満足度の高いファストフードを目指してまいりました>とある。例えば、「調理」。Webサイトに絶品・絶妙の両バーガーの「おいしさのヒミツ」として、通常のファストフードではあり得ない「店舗で焼く前に塩を振る」というオペレーションを実施しているとある。その理由は<パティの中に塩を入れておくと、焼くときに肉が必要以上に引き締まり、硬くなる>からだそうだ。「ひと手間」加えているのである。
なぜ、ひと手間を加えるのか。当然、手間がかかり、味にバラツキがでるリスクとなる。それは、「ガッツリ系」の登場した理由とも共通する。「デカメンチカツバーガー」は東京ウォーカーの記事に、<「ハンバーガーにガッツリかぶりつきたい!」というボリューム重視派>の<「もっと食べ応えがあるバーガーメニューを!」という声から誕生した>とある。
さらにロッテリアで「ガッツリ」といえば、忘れてはならないのが今年登場した「タワーチーズバーガー」だ。それは同社の目指す方向を如実に示しているといえる。
同社のWebサイトに<今だけ、お客様の声に応えて「タワーチーズバーガー」完成!>と記されている。「タワーチーズバーガー」は、通常のチーズバーガーを顧客の要望に応じて増量(増段)し、10段なら通常1,060円のところ、お試し体験価格の990円で販売していた。ロッテリアは儲かるのか。一度に990円の売上げとなるのは魅力だ。しかし、バランスを取り積み上げる手間たるや、前出の「塩を振る」という「ひと手間」どころの騒ぎではない。
「もっとおいしいバーガーが食べたい」「もっとガッツリ食べたい」「もっと安く食べたい」。そんな顧客の声に全て応えようとすると、リーダーの戦略である「全方位戦略」になってしまう。しかし、規模の経済が活かせるコストリーダーでなければ、3つを同時に叶えることはできない。故に、昨年はまだ、リーマンショックの傷も癒えていない世の中で「デカメンチカツバーガー」を、「ガッツリ&安く」提供した。今年は「節約疲れ」ともいわれはじめた世の中で「はみだしステーキバーガー」を「おいしく&ガッツリ」提供しようという意図なのだろう。
ロッテリアは「フォロアー」ではない。その戦略は、「顧客の要望に徹底的に応じる」ことによって、少ない店舗数でも支持顧客層を確保し、そのファンを独自の生存領域とすることによって、一つのニッチ戦略をとっているのである。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。