単純化すれば、世の中には2種類の人間しかいない。「買ってくれる人」と、「買ってくれない人」。問題は、それが「誰」なのかを特定することが難しいことだ。それ故、「ターゲティング」に悩むのだ。
「ペルソナ(persona)」という言葉は「仮面」や「登場人物」という意味を持つ。つまり商品のユーザー像を仮想の人格を詳細に作り上げていく手法だ。ペルソナを作り上げると、ターゲット像が極めてリアルになることによって、ターゲットのニーズや課題、購入動機などが理解できるようになり、今まで漠然としていたターゲット像とのギャップを埋めることができるようになる。また、関係者一同がターゲット像を共有しやすくなることから、マーケティングプランの全体の策定などや、詳細な販促プランや接客方法まで落とし込みをする時でもブレがなくなるというメリットがある。
ペルソナを作る時は、できる限り詳細に、生身の一人の人物像を作り上げていくことが肝要だ。例えば、「西橋本4丁目のライオンズガーデンに住む金沢光恵さん44才は、○○大学を卒業後、商社の○○に勤務。○○自動車に勤務している3つ年上の夫との結婚を機に26才で退職。30歳で娘を出産。現在の趣味は紅茶とベランダガーデニングで、ハーブの栽培に凝っている。独身時代の買い物は・・・」というような具合だ。
ペルソナのように、極めて具体的なターゲット像を描くと、必ずといっていいほど「そんなに絞り込んだらターゲットが少なくなってしまう」という意見が出る。しかし、冒頭に記したように、世の中には「買ってくれる人」と、「買ってくれない人」の2種類の人間しかいない。一度、思い切り絞り込んで、「こんな人なら、必ず買ってくれる」というターゲット像を描いてみることだ。そして、そのターゲットに自社がどの程度、到達(Reach)可能かを考え、どの程度の規模(Realistic Scale)があるのかを考える。さらに、そのターゲットを取り込むことによって、ターゲット像の異なる新たなターゲットに波及効果(Ripple Effect)があるかも考えるのだ。そうして、まだ「ターゲットボリュームが足りない」ということになったら、ターゲット像の条件を緩めて、「買ってくれる」という可能性が低くなりすぎない程度まで広げていけばいい。
上記のやり方に厳密性を求めるなら、市場調査などの定量データにユーザーインタビューなどの定性データを加え、最後に想定に想定を重ねて一つの人物像を作り上げていくことになる。そうすれば、規模などが定量的にとらえられるようになる。しかし、定量的な確からしさにこだわりすぎるより、自社で設定しようとしているポジショニングや、商品をはじめとしたマーケティングミックス(4P)が明確にできることを重要視することだ。
「スマーティー アリオ橋本店」のターゲットが、単純に「40代女性」や「アラフォー女性」だったら、どこのSCにもある没個性的なショップになっていることだろう。同店はそれを避けるために、ターゲット像を絞り込んで具体化し、先鋭的な特徴を出しているのである。
スマーティーは神戸市の「イオンモール神戸北」に2号店も出店しており、2店の結果を検証して来春以降、店舗を拡大するという。果たして、「スマーティー」の3号店以下が続々と登場することになるのか、非常に楽しみだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。