ユニクロの出店政策が好立地確保に向けて加速している。その意図を考察してみよう。
11月24日付日経MJに「ユニクロ 都心主要駅の営業強化 東京都新宿、好立地に移転」という記事が掲載された。「期間限定 「ヒートテック」専門店も」という小見出しもある。記事内容はユニクロの「駅ナカ」ショップについてだ。同記事によると、ユニクロの現在の出店政策は「単位面積当りの販売力強化」であり、そのために基本路線として1300平方メートル超の大型店舗開発が優先しているという。その例外が駅ナカであり、30~165平方メートル程度の小型店を他社・他業態に先駆けて好立地確保のために展開しているということである。
あなたが飲料を購入する時、それをどのように手に入れたいと望むだろうか。手に入れたい飲料の種類にもよるだろうから、少し整理する。缶や500mlペットボトルなどの小型容器に入ったタイプ。1.5リットルや2リットルの大型容器のタイプ。そして、とてもオシャレな海外ブランドが作っている希少性もある話題の飲料。各々の場合を考えて欲しい。
閑話休題。ユニクロの出店政策における駅ナカの位置づけに関しては、日経MJの記事では「営業網の拡大を急ぐ」と書いてある。
1984年に広島に第1号店を開業したユニクロは、広い駐車場を備えたロードサイド店というチャネル(Place)展開であり、そこでベーシックでユニセックスな服という製品(Product)を安価な価格(Price)で取りそろえ、チラシ広告で集客(Promotion)していた。ターゲットは家族連れ。家族が着る、安くてそこそこの品質の服が一度に揃うというポジショニングが支持されていた。つまり、郊外の個店という「点」に集客していたのが原点だ。
出店政策が変化したのは、1998年の原宿出店以来である。前年に東証二部上場を果たし、豊富なキャッシュを手にしたことも大いに関係しているはずだ。2000年にはJR東日本・東日本キヨスク(現JR東日本リテールネット)と業務提携し、初の小型店、駅ナカ店である「ユニクロキヨスク新宿南口店」をオープンした。チラシに頼るのではなく、99年から米系広告代理店Wieden+Kennedy社との契約でブランド広告(Promotion)を強化し、ロードサイドではなく、人のいる都心や人が通る駅という場所(Place)に出店し、家族連れではなく、個々人をターゲットとした展開に切り替えたのである。
以後、今日に至る展開は、商品(Product)はベーシック&ユニセックスからファッション性を高めた。2009年のデザイナー、ジル・サンダーとの監修契約、彼女自身のデザインによる「ユニクロ+J」の展開で、かつてはユニクロ製品と判らないように着るというポジショニングから、ユニクロブランド及び「+J」は積極的に購入・着用するブランドのポジショニングへと変化している。しかし、価格(Price)は以前と大きく変化はしておらず、割安感は向上していることも今日の高い顧客支持の源泉である。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。