モスバーガーの新たなる挑戦・「モスカフェ」の実験を読み解く

2010.11.16

営業・マーケティング

モスバーガーの新たなる挑戦・「モスカフェ」の実験を読み解く

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 モスバーガーがカフェ業態の「モスカフェ」を11月15日にオープンした。首都圏に3店舗ある既存カフェ業態店とは異なる、新たな「モスカフェ」ブランドを立ち上げたのだ。その実験店舗的な意図を読み解いてみよう。

■商品(Product)と価格(Price)及び立地(Place)の関係で読み解く

 「モスカフェ」の最大の特徴はスイーツだ。<カフェ店舗限定メニューとして、(同グループとして24店舗を運営する店)マザーリーフのパティシエによるオリジナル カップケーキ8種を新発売します>とリリースにある。その反面、バーガー類をモスバーガー、とびきりハンバーグサンドチーズなどの定番商品に絞り込んでいることがわかる。一方、食事系メニューは「カフェごはん」として、ジャマイカチキンごはん、サラダ仕立てのタコライスなどのいわゆる、カフェめし的ラインナップが揃う。ドリンクはホット黒蜜抹茶ラテ、アイスマンゴーフルーツティーなど、もちろん既存店にはないオリジナルメニューが並んでいる。さらに、アルコールも扱っていることが大きな特徴だ。メニューから見れば、既にマクドナルドをはじめとする、ファストフードとは全く異なるターゲットを狙っていることがわかる。
 価格的にわかりやすいのが、「カフェごはん」とドリンクの組み合わせだろう。ごはん680円+ドリンクの中心価格帯420円=1,100円。昨今のサラリーマンの昼食としては2~3食分に相当するが、都心一等地のランチとしては妥当な価格といえる。モスバーガー320円+プレミアムブレンドコーヒー330円+カップケーキ350円=1,000円もわかりやすい。
 「モスカフェ」の一つの狙いは、組み合わせ販売(クロスセリング)での収益アップだ。セットメニューが主流の昨今のファストフードで1,000円超えのオーダーする人はあまりいない。しかし、地代家賃の高い都心一等地では「客単価」を高めることが重要なのである。

■「売上=客数×客単価」の原則で読み解く

 「客単価」の以上に重要なのが「客数」だ。なるべく多く来店客を集めること。しかし、店舗ビジネスには「客席数」という絶対的な制約がある。
 「モスカフェ」の戦略は、「閑散時間」を作らないことであると考えられる。そのために「4毛作」で収穫をしようという意図だ。
まず、朝は定番バーガーとドリンクで朝食対応。昼はカフェごはん+ドリンクか、バーガー+ドリンク+スイーツ。午後は夕方までドリンク+スイーツ。夜はカフェめし+アルコールで夕食対応(もちろん、女性の「お一人様」需要も視野に入れている)。つまり、限りある席数を回転数を高めることによって、「坪単価」を上げる戦略であると考えられる。
 モスは前述の、注文があってから作り始める「アフターオーダー方式」などで、ファストフードと一線を画してはいるものの、顧客から見ればあくまで「ハンバーガー店」だ。朝食から喫茶、夕食まで全てに対応する店という認識を得るのはむずかしい。その点、「カフェ」という、言葉としては普及したが厳密な定義はなく、人によってイメージや求めるものが異なる存在は、うまく訴求すればターゲットの拡大と利用機会の増大、客単価向上などが見込めることになる。

 モスの「カフェ進出」は「カフェ業界」での勝負となる。リリースには<「モスカフェ」専用ロゴを使用した新たなデザインの看板を採用し、カフェタイプ店舗をわかりやすく訴求>とあるが、「カフェ業界」でどこまで「モス」のブランドが通用するかが問われることになる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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