モスバーガーがカフェ業態の「モスカフェ」を11月15日にオープンした。首都圏に3店舗ある既存カフェ業態店とは異なる、新たな「モスカフェ」ブランドを立ち上げたのだ。その実験店舗的な意図を読み解いてみよう。
<新たな看板を採用した新型店舗「モスカフェ 西銀座店」11月15日(月)オープン~店舗限定「オリジナルカップケーキ」8種を新発売~>(11月11日株式会社モスフードサービス・ニュースリリース)
http://www.mos.co.jp/company/pr_pdf/pr_101111_1.pdf
上記リリースによると、既存ブランドで展開しているカフェ業態店は、江ノ島、大崎、銀座という立地だ。江ノ島は観光地立地で、大崎は運営会社のモスフードサービスが入居しているオフィスビルの2階だ。今回の「モスカフェ」の立地に一番近いのは銀座だが、立地は銀座の外れの8丁目、新橋に近い既存店を衣替えしたものだ。
今回の「モスカフェ 西銀座店」は、JR有楽町から徒歩3分。東京メトロ各線の銀座駅とも直結した高速道路の高架下「西銀座デパート」の1階にある。付近は有楽町西武閉店後にルミネが入居の名乗りを上げているマリオンや、丸井有楽町店、プランタン銀座など従来の銀座より客層が一段若い「有楽町エリア」を形成しつつある熱いスポットである。
■立地(Place)の意味を深掘りする
リリースによると、<今後、メニュー構成や看板の効果などを検証し、他のカフェタイプ店舗への水平展開を行うとともに、都心部を中心とした一等立地への新規出店を行っていきます>とある。前述の各々立地条件が異なる既存カフェ3店舗での拡大を経て、最も狙っているのは都心一等地での展開だろう。
モスバーガーといえば、ファストフードの概念と一線を画す、注文があってから作り始める「アフターオーダー方式」のこだわりなどが有名だが、1972年の創業以来長く、資金不足で広告宣伝が十分にできずに、「美味しさで口コミを広げて集客する」という2等立地での出店が長く続いた。2004年から従来の赤い看板(いわゆる「赤モス」)から緑の看板(「緑モス」)への掛け替えが始まった頃より、駅近などの好立地に進出が始まったが、今後は都心一等地をカフェ業態で狙う戦略が見て取れる。
■ターゲットを競合・マクドナルドとの関係で深掘りする
都心一等地のカフェ業態で狙う背景とターゲットは誰か。
リリースでは<既存の 「モスバーガー」のお客さま以外の層の取り込みも狙っていきます>とあり、さらに、立地の特性から<平日は近隣のOLや会社員、休日にはショッピング客が多く見込める>としている。
モスバーガーは昨今好業績を記録している。それを支えているのは、2008年の年末に発売が開始され、今年8月末に3600万食の販売を記録した「とびきりハンバーグサンド」だ。国産肉100%の安心感を訴求し、牛豚合い挽きのパティにシンプルな具材・ソースでうまさを強調した商品は、「100%オージービーフ」がメインのハンバーガー業界のリーダー企業、マクドナルドに対するチャレンジャーの差別化戦略としては大成功であった。
そのチャレンジャーとしての次の一手が「カフェ業態」なのだ。
競合といっても圧倒的な力を持つリーダー企業のマクドナルドであるが、こと、カフェ業態に関しては「トラウマ」ともいうべきものがあるはずだ。
マクドナルドは新業態・カフェ店舗として「マックカフェ」の名で1998年にスタートし、
店舗を矢継ぎ早に展開したものの、翌年撤退。2度目は2007年に同名の店舗を複数展開したが、翌年には早々に縮小・撤退。現在は既存店舗の一部で「カフェメニュー」のブランドネームとなっている。
マクドナルドの「マックカフェメニュー」、及び2008年に価格はそのままに品質をプレミアム化したコーヒーは、従来のファストフード利用客以外を吸引するのに貢献しているという。もちろん、「コーヒー無料」のリーダー企業ならではの力技が効いていることも見逃せない。
「従来客(≒ファストフード利用客)以外の取り込み」というターゲティングにおいて、被る部分も多そうだが、モスはどんな武器で戦おうとしているのだろうか。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。