「バンカラ」とか「ハイカラ」とか、例示するには既に死語だが、かつて各大学には強烈なカラーが存在した。カラーというのでなければ校風といっていいかもしれない。それが希薄化している気がする。ナゼだろうか。
■社会的な影響要因(Social)
日本の生産年齢人口(15~64才)は1995年をピークに96年から減少。97年から少子化社会といわれるようになった。その影響で2007年頃から大学の入学希望者総数が入学定員総数を下回わる「全入時代」に突入。各大学の生き残りが始まった。
その中で、大学の入学金・授業料は初期費用を安くして授業料を高めにするなど様々な徴収方法の変更をしたり、奨学制度の整備をしたりと、相対的に学生及び親の負担を軽減して多くの学生を集める傾向が各校で強まっている。その結果、大学間での費用格差が減少している。
学生のカルチャーやファッションに注目してみると、かつては男子学生でいえば、「ホットドッグプレス」や「ポパイ」、「メンズクラブ」「メンズノンノ」というような雑誌からの情報に偏向していたが、インターネットやモバイルの発達によって、学生・若者同士の生の情報がリアルタイムで入手できるようになった。また、ショッピングも流行のエリア、店に行かずともECでマストアイテムが各日におさえられるようになった。また、買い物のしかたも、お手本コーディネイト例をそっくりそのまま購入する「コーデ買い」(←ちょっと言葉古い?)も一般的になっているようだ。
買い物に言及するならば、現在の若者は「好景気を知らない世代」であり、かつてのバブル世代にあったような、贅沢で人と違う目立つための消費には関心を示さない。身の丈消費はファストファッションやユニクロなどの大量生産・大量販売モデルであるSPA型のブランドに人気が集まる。
■技術的な影響要因(Technological)
友人や仲間とのコミュニケーションにも、前項の情報やモノの入手にもデジタルデバイスは欠かせない。しかし、それらは購入費だけでなくランニング費用の通信費負担が重い。ある青学の学生に聞いたところ、スマートフォンとPCの両方を使用している彼は、1ヶ月のアルバイト代の3割は通信費に費やすという。ましてや前述の通り、アルバイトをする時間は限られている。仕送りも少ない。全体として少ない可処分費用が侵食されてしまうのだ。
PESTの項目を洗い出してみると、各項目の意味するところは各大学のカラーを構成する学生自身の環境や志向がフラット化していることがわかる。
少子化による全入時代において、大学の生き残りのために入学金・授業料格差は減少して、金銭面での入学ハードルは全体として下がった。
入学後の生活は親からの仕送りが減る一方で、全ての学生にとって欠かせなくなっているデジタルコミュニケーション機器と通信費が誰にも等しく支払いを発生させている。さらに3年次以降は就職活動でアルバイトも制限され、自由になる時間も収入も少なくなる。学生間の「貧富の差」は減少する要因が多くなっているといえる。
一方、ほぼ全学生がデジタルデバイスを使用していることから、情報へのアクセシビリティーとリアルタイム性が高まり、情報格差がなくなった。情報を得て購入するモノは大量生産・大量販売型が多くなっている。全体としてはファッションや情報感度は高まるが、一方で没個性化は否めない。
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2015.07.17
2009.10.31
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。