10月28日、出版不況といわれる中、女性ファッション雑誌では向かうところ敵なしの「宝島社」から、40代女性向け雑誌が創刊された。『GLOW』。通勤電車の車内吊りや新聞広告を見た人も多いだろう。雑誌のタイトルに添えられているキャッチフレーズは「ツヤっと輝く。40代女子力!」。広告のキャッチコピーは、「アラフォーって呼ばないで。私たちは、40代女子です。」だ。
「アラフォー」と「40代女子」はどのような違いがあるのか。
年齢的には35歳~44歳に対して40歳~49歳と年齢が5歳上になるが、年代的な違いは何か。40歳と45歳を見てみよう。
アラフォー40歳の誕生は1970年。日本の高度成長期最後の年、大阪万博の開催年である。1986年にバブル景気に突入したころはまだ高校生になったばかり。大学在学中か社会に出て間もない頃にバブルは崩壊した。
同じアラフォーでも35歳は1975年生まれ。バブル崩壊の時はまだ16歳だ。大学を卒業した1997年は1994年の第11回新語・流行語大賞にもなった「就職氷河期」のまっただ中である。人生の中で好景気の記憶があまりない世代であるといわれている。
40代女子45歳の場合はどうか。1965年生まれで、73年の第一次オイルショックの時に、「トイレットペーパーがなくなる!」という買占め騒動や、街のネオンが消えた風景などがおぼろげな記憶にある。景気はその後2度ほど循環したが、大きな不況の波を実感することなく、大学生の頃、景気はバブルに突入。就職も売り手市場で引く手あまただった。バブルの徒花として咲いたディスコブームは次第に高級ディスコ、ウォーターフロント、社会現象にもなった「ジュリアナ」へと続き、身体の線を強調したボディコン服を着て、鳥の羽でできた「ジュリアナ扇」と呼ばれる扇子を振り回してお立ち台で踊る女性がメディアでも注目を集めた。
上記のように概ねアラフォー世代と40代女子世代は青年期の景気による体験において大きな差異がある。故に、『GLOW』はターゲット世代を40代として、「ツヤっと輝く」という言葉をキャッチフレーズの一部に用いているのだ。もちろん、ジュリアナのお立ち台で踊っていた人もその中に含まれる。
しかし、筆者が『GLOW』のキャッチフレーズを絶賛するのは、上記のターゲットが世代背景から「ツヤ」という言葉に飛びつくからというわけではない。
既述の如く評価は「40代女子」という部分である。いくら世代的にバブっていていたとしても、誰もがいまだに「ツヤ」に飛びつける年代ではない。「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」で有名な詩人・林芙美子が夭逝した1951年とは年代が違うが、生あるものにとって時の流れが厳しいことに変わりはない。
そんな現実をさらりと受け流して、「ツヤと輝く」べく生きている人もいる。創刊号の表紙には中央に大きく「私たち40代、輝きます宣言!」と書いてある。さらに小さく「好きに生きてこそ、一生女子」という言葉も添えられている。「一生輝いて、女子であり続けること」を宣言しているのだ。この宣言の如き覚悟がある人こそ、誰が年代と言葉のギャップがあると言おうが「女子」を名乗れるのである。表紙には「最強の40代女子登場!」として、代表選手としての小泉今日子(44歳)とYOU(46歳)が微笑んでいる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。