玩具のバンダイが化粧品?しかも、キャラクターが「のだめ」?…。いくつも疑問符が頭に浮かんでしまう記事が日経MJ10月26日のファッション&リビング欄に掲載された。しかし、そこには同社の戦略と願いが込められているように思われる。
「ベルサイユのばら」シリーズの商品には、現在はアイライナーとマスカラ、スキンケアマスクと入浴剤がある。特にマスカラ、アイライナーは、お姉様フェミニン系の「Ray」、大人オトメ系の「bea’s UP」、ギャル系の「小悪魔ageha」と現在でも幅広いファッション誌で紹介されている。
同シリーズの特徴は何といっても商品パッケージで、「ベルばら」の通称で誰もが漫画・アニメのキャラクターがデカデカと描いてある。池田理代子の描く人物の特徴である、誇張されたまつげや目元、強い目力(めぢから)が、マスカラやアイライナーの威力を無言で訴えかけている。
化粧品の機能性や成分を全面に打ち出すのではなく、キャラクターによって「こんな風になれる!」と訴えかける手法の競合商品も存在している。
2007年から商品展開を行っている「美肌一族」。2006年に商品に先行して携帯小説を配信。さらに2008年には小説を元にしたコミックの発売や、テレビアニメを放送するなどのクロスメディアで展開し話題を獲得して商品認知と販売に成功した。販売しているのは2005年7月設立の「株式会社ラブラボ」。社長はファッション誌JJの読者モデル&ライター出身だ。
「美肌一族」は「美肌」だけに、スキンケア商品が中心で、「クレアボーテ」のラインナップとは一部被っているが全面競合ではない。クロスメディアのカギともなったアニメ化を、バンダイのガールズトイ事業部にある成人女性向け商品の企画チーム「バンダイフィル」と組んで実現させたという経緯(日経トレンディネット2008年11月18日)があるからかもしれない。
キャラクターで訴えかけるパッケージの化粧品で完全競合となるのは、文政8年(1825年)依頼の歴史を持つ老舗、「株式会社伊勢半」の「ヒロインメイク」シリーズだ。「ベルばら」や「美肌一族」同様、目元を強調し、金髪巻き毛などの懐かしき昭和の少女漫画のヒロインを彷彿とさせるキャラクターが全面に押し出されている。有名キャラクターではないものの、商品のキャッチコピーがキャラクターと同じくらいに目立ち、効果を挙げている。「もっと天まで届け!マスカラ」「泣き顔美しいアイライナー」「唇よ咲け!リキッドルージュ」「揺るがぬ美肌 マット化粧下地」…などなど。ラインナップはアイメークを中心にメークアップ用品とベースメークまでと幅広い。同社社史を見ると、発売は2005年かというから、ほぼ同時期に展開された競合ではあるが最古参であるようだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。