暑かった今年の夏、アイスの需要も爆発的に高まった。大定番商品・赤城乳業「ガリガリ君」は、1日の生産100万本といわれる能力(Wikipediaより)を持ってしても生産が追いつかず、店頭から姿を消した。これは一つの伝説になるであろう。同じくアイスの定番ブランドではあるが、店舗販売にこだわるサーティワンアイスクリームもこの夏、7月に全国1,000店舗の展開という記録を達成した。
■ターゲットは誰なのか
ガリガリ君は今日、おとなから子どもまで幅広い顧客層から愛され、購入されている。麻生太郎元首相もファンと公言しているし、美食で有名な俳優の中尾彬が、「日本一美味しいスイーツ」と評していることも有名だ。
では、1000店のサーティワンアイスクリームの店頭でアイスを買っているのは誰なのだろう。前出のexciteコネタの記事によれば、<20~30年前に、女子中学生か女子高生のお客様が中心の店>だったのが、昨今は<お子さんがいる主婦の方にも人気で、そのほか年配の方や男性なども増えております>と担当者がコメントしている。
アイスといえば「こどもの食べ物」という先入観にとらわれず、あくまで幅広い年代に受入れられるような工夫をしてきたことが、ガリガリ君の2億5500万本達成のヒミツであることは間違いない。また、サーティワンアイスクリームも「女子中・高生向けのお店」ではなく、「子連れ主婦」をターゲットとしてイオンやヨーカドーなどのスーパーにFCを広げたことが1000店達成のポイントである。
ガリガリ君とサーティワンアイスクリームのターゲット拡大には、一つ重要な示唆がある。それは「顧客は歳を取る」ということだ。
80年代前半にガリガリ君はコンビニをメインの販売チャネルとした。1975年にセブンイレブン第1号店が誕生したコンビニ業界も、80年代前半はまだ「若者中心」であったが、今日ではオトナ・中年・熟年の買い物スポットだ。麻生元首相はわからないが、美食の中尾彬氏も行くだろう。同年代男性もしかりだ。その層をファンとしてしっかりつかんでいることが成功のポイントである。
同様に、サーティワンアイスクリームの店舗に通った花の女子中・高生も「子連れ主婦」になる。単独の路面店にわざわざ立ち寄るのは面倒でもあり、現役女子中・高生の中に割って入る抵抗感もあるかもしれない。そうしたかつての顧客層を振り向かせるにはスーパーのFC店は絶好の接点である。
■そのターゲットでいいのか?
幅広いターゲットに拡張することは、販売量確保と少子化対応という意味からも理にかなっている。ガリガリ君の場合は、従来からコンビニエンスストアをメインの販売チャネルとしていたため、そこで歳を重ねていくファンをがっちりと確保すればよかった。しかし、サーティワンアイスクリームは新たに、かつての顧客である子連れ主婦との接点としての店舗を設けた。そのターゲットが正しいのか検証が必要だったはずだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。