この記事を読んでいるのが男性であれば、どのような服装をしているだろうか。金曜日ということもあってか、通勤時間帯もカジュアルな服装が目についた。「カジュアルフライデーか」と思いつつ、その言葉自体が死語になりつつあることに気がついた。
紳士服量販店も高価格帯を狙いにきた。10月15日の日経MJファッション&リビング欄に「はるやま、記事厚めのスーツ 海外企業と開発」という記事が掲載された。中高年の富裕層を狙い、流行の軽くて薄いイタリアメーカーの記事ではなく、中高年から根強い支持のある英国生地を用いて61,950円などのスーツを売り出すという。決して高級スーツの価格ではないが、レディーメイドでもあり、廉価なイメージのある紳士服量販店の商品としては高額だといえる。
しかし、今日の潮流は、前出のJ-CASTニュースの記事が指摘するように、「高額品」が支持されているのではなく、「品質志向」へのシフトであることがポイントなのだ。
少し前の放送だが、日経スペシャル「ガイアの夜明け」5月18日の放送では、『銀座デパート最終戦争~百貨店は新しい価値を作り出せるか?~ 』というテーマが放映された。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview100518.html
「銀座スーツ戦争 松屋銀座の大勝負」という話題では、百貨店紳士服苦境の中、09年に対前年比160%という記録をたたき出した松屋のバイヤー、宮崎俊一氏が仕掛ける有名なスーツ販売催事「銀座の男市」の仕掛けが紹介された。同催事では目玉商品として、完全ハンドメードで3万5000円という常識破りのスーツが人気を博する。それこそがまさに、「品質志向」を示すものである。
商品の「価格」と「価値」の関係は、「安かろう悪かろう」から、「高くて高品質」まで、概ね正比例を示す。それを「バリューライン」という。バブル経済華やかなりし頃は、「高くて高品質」がもてはやされ、ともすれば、「価格が高いこと」自体が価値ともされて、「高くてそこそこの品質」や「高くて品質が低い」ものまでが売れた。今日ではあり得ない話だ。さらに、今日では「価格なりの品質」であるバリューライン上の商品も売れなくなっている。それが、J-CASTニュースが伝えた9,800円スーツが売れ残る理由である。
大手流通も1万円以下スーツが売れなくなることを黙ってみているわけではない。
イオンは跳んでもはねても快適に着られるストレッチ製法で、水を被っても平気な撥水加工まで施してあるスーツを7,800円で発売している。「イオン アクションストレッチスーツ」。その商品特性を見事に表現したCMも大量に投下されている。
http://www.youtube.com/watch?v=tIZOhEnL6Yw (YouTube動画)
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。