この記事を読んでいるのが男性であれば、どのような服装をしているだろうか。金曜日ということもあってか、通勤時間帯もカジュアルな服装が目についた。「カジュアルフライデーか」と思いつつ、その言葉自体が死語になりつつあることに気がついた。
スーツを脱ぎ捨て、「カジュアル」になった男性ビジネスパーソンたち。ふと気がつけば世界的にもスーツを着ない民族になっているようだ。
<職場でのスーツ着用率、日本は世界で10位=調査>(8月5日・ロイター)
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-16655720100805?sp=true
記事では<調査は計1万2500人を対象に実施。職場での服装に関する意識の違いを調べるため、仕事にスーツやきちんとした格好で行くかどうか>などを質問したところ、<職場でのスーツ着用率が最も高いのはインドで、日本は10位だった>という。トップのインドは58%で、米国は37%、日本は35%だという。
既に日本のスーツ族は「絶滅危惧種」であり、「スーツ」は前世紀の遺物となりつつあるのか。そうでなくとも、日本の人口は少子高齢化が進み、団塊の世代の完全リタイア後にはスーツ市場はますますプロダクトライフサイクルの「衰退期」の坂を転がり落ちていくことになる。
しかし、日本にビジネスシーンから「スーツ姿」が完全に消え去ることは、恐らくない。市場は極端に縮小したパイの食い合いになるのである。
1993年から2003年が「失われた10年」と呼ばれていた日本経済は、2008年においても長引くデフレ不況から抜け出せないでいた。そこに米国発の「リーマンショック」が直撃した。いつの間にかメディアに記される文字は「失われた20年」と書き換わっており、まだしばらくは出口が見えないことを予感させた。
不景気の中、手っ取り早く消費者の歓心を買うには「価格訴求」に限る。大手流通や紳士服専業量販各社は1万円を切るスーツをこぞって発売した。折しも「超・就職氷河期」に突入し、スーツ1着では活動が終えられないリクルート学生や、お小遣いが極限まで削られたお父さんたちに歓迎され、激安スーツは売れに売れた。しかし、2010年に入って潮目が変わったようだ。
<9800円スーツ売れ残り 百貨店「安売り戦略」に異変>(J-CASTニュース・5月17日)
http://www.j-cast.com/2010/05/17066679.html?p=1
記事では< 松屋銀座で9800円スーツがセール初日に完売した2009年から一転、10年はセールから1週間経っても売れ残っているという。代わりに売れているのが高級生地を使った3、4万円台のスーツだ>などと、百貨店担当者の「客単価上昇、景気が多少戻ってきた感じ」というコメント共に<消費者が価格重視から品質志向にシフトしているようだ>と伝えている。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。