キムタクが出演するマンダム・GATSBYの新CMが9月20にオンエアされ、資生堂・unoも8月27日からオンエアしている新CMシリーズに9月27日、バージョンを1つ加えた。宿命のライバルが壮絶な火花を散らしている。
それに対して、マンダムは同様のミストタイプ、「ギャッツビー クイックムービングミスト」を今年2月に投入した。ボトルをひねると「カチッ」とプッシュノズルが頭を出すパッケージに工夫を凝らしたが、中味はベタつきを抑えたミストで、「何度でも直せる」というFOG BAR同様の訴求点。ヘアサロンのアーティストをWebサイトに登場させ使い方指南をさせるという、これも同様の手法を展開した。つまり、これは旧リーダー企業からの「同質化戦略」である。
ギャッツビーの幅広いラインナップで販売店の棚で面展開のできるマンダムは、FOG BARと同質化したミストタイプの商品を消費者の手に取らせることも可能だ。そして、ヘアの作り込みが自由にできる反面、如何せん手がベタつき、洗髪も1度で足りないというユーザーの不満解消もできる。しかし、それは資生堂unoが当時の「ワックスにさよなら」といっていたコピーを体現することになる。
資生堂が仕掛けたのは、チャレンジャーがリーダーに対して行う「理論の自縛化」である。リーダー企業が発信してきたのと矛盾するメッセージで、同質化できない差別化を図るのだ。有名な例では、かつてのキリンビールとアサヒビールがそれだ。「ラガービール」で、ビールの「コク」や「旨味」を訴求してきたキリンに対し、それに反する「ドライ」「キレ」という新たな価値観をアサヒが持ち込み、1987年に「スーパードライ」を発売。翌年、ビール各社同様、キリンも「ドライ戦争」に突入したが、消費者には受入れられず、首位の座を明け渡すことになったのである。
そこで開発されたのが、今回の「GATSBY WATER WAX」だ。同社のWebサイトにある商品説明では、<アクアラバー*配合で水のようになじみ、何度でも手直し可能。手も髪もベタつかず、簡単に洗い落とせる>とある。ワックスの持つ髪型の自由度そのままに、ミストの利点を実現したわけだ。そこで、CMのキメのコピー「やっぱワックスでしょ。」となるのである。
一方、無敵とも思える「uno FOG BAR」にも弱点はある。ナチュラルなスタイルを訴求してはいるものの、「そうはいっても、もうちょっとホールド感が強くならないか?」というものだ。もっと髪型を遊びたい若年層に加え、髪の毛にボリュームを出したいという筆者のようなお年頃の層には切実な願いである。そこで発売されたのが、CMで「バリカタ新登場」と紹介される濃紺のボトル。「FOG BAR 万能ストロング」だ。使ってみると、確かに今までのラインナップでは一番整髪力が強かった赤ボトル以上に髪のまとまりや立ち上がりがいい。しかし、ごっつりと作り込むような髪型に向くほどではない。ナチュラルが売りの「FOG BAR」にとって、理論の自縛化を起こさないギリギリの線で、ワックスにユーザーが流出しないための調整をした結果だと思われる。
CMの宮﨑あおい起用にも苦労が忍ばれる。発売当初より、ナチュラル仕上げなので、女性も使える商品であると訴求してきたが、狙いほど女性層の開拓が進んでいないと思われる。筆者が教鞭を執っている大学の授業で、FOG BAR使用者を挙手させてみると、男子学生への普及率はかなり高かったが、女子学生の使用者は数えるほどしかいなかった。そこで、CM「WOMEN篇」である。宮﨑あおいもバーのような理髪店「FOG BARBER」で、隣に座る瑛太を指差し、「彼と同じものを」とオーダーする。男女兼用であるというアピールだ。最後には「さよならワックス」のテロップに重ねて、すかさず「女子にも大人気」とアナウンスが入る。
GATSBY 対 uno:スタイリング剤ガチンコ勝負は、お互いに弱みを克服しつつ、本来の強み、ポジションに立ち戻っての戦いとなった。しばらくは勝負の行方から目が離せない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。