圧倒的なコストリーダー、マクドナルドが君臨するハンバーガー市場において、下位企業がその意地をかけた戦いを展開しはじめた。フレッシュネスバーガーとバーガーキングである。
同社の看板商品は“とてつもなくでかい”を意味する『WHOPPER』であるが、そのセットを<ご購入のお客様に限り、店内でバーガー類とサイドを全て召し上がっていただいた際に、量にご満足いただけなかった場合には、ご購入いただいたバーガーと同じ商品を、ご満足いただけるまでご提供させていただきます>(同リリース)というキャンペーンだ。
キャンペーン開始と同時に各メディアの記者が体験しレポートをWebサイトに掲載した。
<ハンバーガーおかわり自由に挑戦!残すと商品相当額お支払い…>(9月16日フジサンケイZAKZAK)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20100916/dms1009161158000-n2.htm
一般の来店客も挑戦しているようで、体験記なども含めてBlogやTwitterでも盛り上がりを見せている。AIDMAのAttention(認知)やInterest(興味)を口コミで促進しようという戦略であるが、その前提として市場のフォローの風を利用していることも見逃せない。
バーガーキングは「直火焼き本格バーガー」が売りであるが、本格バーガーや高級バーバーはここ数年、静かなブームとなっており、ハワイ生まれの「クア・アイナ」などの歴史ある小規模チェーンから新規出店する単独店まで、数多くの店舗が参戦している。
バーガーキングのもう一つの売りは、前述の<“とてつもなくでかい”を意味する『WHOPPER』>だ。本格バーガーは総じてサイズが大きめであるが、大型サイズを一般化し、ブームにしたのは、やはりマクドナルドの功績が大きいだろう。2007年に販売されていた「メガマック」に始まり、現在の看板である「クォーターパウンダー」にいたる大型メニューはマクドナルドがリードしてきたといえる。現在も「クォーターパウンダー200円キャンペーン」で、さらに市場拡大を図っているところだ。
バーガーキングは市場のトレンドやリーダー企業の市場開拓にうまく乗って自社の需要を促進する、フォロアー的アプローチを極めてうまく展開しているといえる。それは、わずか35店舗という規模からすれば実に合理的だ。
さらにバーガーキングは「おかわり自由」での注目を利用する二の矢三の矢を用意することも忘れてはいない。「WHOPPER」に次ぐ、日本オリジナルの戦略商品「グリルTeriyaki(テリヤキ)」を「おかわり自由」開始と同日に発売した。いやが上にも注目が集まる中で、マクドナルドを始め先行チェーンが何年も前から成功させている、日本市場における鉄板メニューである「テリヤキ」を投入する。これもフォロアー的アプローチとしては極めて正しく効率的だ。
その翌日には、ランチタイム修了後の時間に、ドリンクを購入するとポテトやパイが無料でもらえるキャンペーンと、平日のランチセットが割引になるキャンペーンを展開するなど、かつてないペースで新施策を展開しはじめた。集めた注目をムダにしないという意図であるのは間違いない。
業界リーダーとチャレンジャーの息をのむような戦いを見るのは楽しい。消費者としてもお得な話も多い。しかし、ニッチャーやフォロアーの知恵を絞った高い方にも、学ぶべき点は多い。特にその制約条件をどのように解消したり、活かしたりしているのかは注目のポイントなのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。