掃除機11万5,500円也。

2010.09.03

営業・マーケティング

掃除機11万5,500円也。

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

手元に自由なお金が11万円あったら、何に使うだろうか。夏休み前のタイミングだったら、「旅行費用」にと思うかもしれない。何かモノを買うとしたら、「家電」と考える人は多いだろう。しかし、「家電」の中で「掃除機」に11万円を使う人という人はいるだろうか。

 独自のコンセプトも、それを評価してくれる人がいなければ、売れない。リリースでも<クリーナーの2010年度国内出荷台数は景気の低迷継続を予測し、前年並みの約520万台(前年比100%)を見込んでいます(当社推定)>としている。マクロ環境(PEST分析)におけるEconomicalな要素は明らかにネガティブだ。果たして需要はあるのか。
 景気の低迷は消費者の生活スタイルを変化させる。Socialな要素を考えれば、レジャーや外食なども内向きになり、屋内居住時間が増えていることが挙げられる。さらに健康問題では、ハウスダストアレルギーの問題は年々増大している。
 室内のアレルゲンを残さず吸引する強力なパワーはサイクロン型というTechnologicalで実現できた。しかし、そのパワーは同時に排気によって床面のホコリを巻き上げるという問題を発生させるという。(同社リリースより)

 3C分析のCustomer(市場の環境と顧客のニーズ)を考えれば、マクロ環境の変化の中で、アレルギーの発症を防止するために、徹底して室内を空気まできれいにするというニーズを持ったターゲット層が存在することがわかる。そして、Competitor(競合)は空気を「きれいにする」という機能までは訴求していない。そこで、Company(自社)は、「床だけでなく、空気まで部屋を丸ごときれいにする」というコンセプトで徹底してターゲットのニーズに応える戦略を徹底する。床面のホコリ巻き上げ問題は、<排気口より下部に設けたシャッターから出る空気のカーテン>(同)によって効率よく空気をきれいにするという。さらに、付随機能として、<掃除機がけが終わった後、空気清浄機のようにお部屋の空気を清浄する「空気清浄モード」>(同)までが装備されている。

 「11万円の掃除機」を全ての人に売ろうとしても、売れるものではない。しかし、それを切実に必要とするターゲット層とそのニーズを抽出し、ニーズギャップを解消してあるべき姿の実現を図る。その時、ターゲット顧客が「それなら払ってもいい」という価格(Customer Value)を算出した時に、11万円という価格設定(Pricing)に行き着いたのだろう。
 エアシスの月間生産計画は1万台だという。
 (2010年09月01日/Sakura Financial News http://news.livedoor.com/article/detail/4982017/
 三洋電機の読みがどこまで当たるか、注目してみたい。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

フォロー フォローして金森 努の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。