ブルドックソースといえば、日本のソース市場のシェア№1ブランドだ。その同社が、「家庭たこ焼き市場」に攻勢をかけているようだ。しかし、実に謎の多い商品であるといえる。
<ブルドックソース、専門店のたこ焼が作れる材料セット「おうちで本格たこ焼材料セット」を発売>(マイライフ手帳@ニュース8月26日)
http://tinyurl.com/2ba84vk
<ブルドックソース、たこ焼専用ソース「ブルドック おうちで本格たこ焼屋さん 310g」を発売>(同8月29日)
http://tinyurl.com/2f9z3jk
短期間に立て続けに出された新商品のリリースであるが、1つめの記事がソースと粉と具材のセット、2つめの記事がたこ焼き専用ソースの発売記事だが、特にここではセット商品に注目してみたい。
記事によれば、商品発売は<たこ焼粉の市場は家庭内食への回帰が大きく影響し拡大する傾向>という、マクロ環境におけるEconomical(経済的な影響要因)を捉えたものだ。さらに、<たこ焼粉を1袋使いきれない人が多いことを背景に、使いきりサイズの(4人前、約32個分)便利な材料セットを発売>したという。同じくマクロ環境における核家族化の進行というSocial(社会的な影響要因)を捉えたものだ。
ここまでは、新商品発売は戦略的合理性があるように思われる。
競争市場分析的に考えてみよう。ブルドックソースはこの商品を、どのような顧客(Customer)に向けて発売し、どのような競合(Competitor)と戦うために上市したのであろうか。
まずは、ブルドックソース自社(Company)がどのような存在か考えてみよう。
前述の通りブルドックソースは日本のソース市場のシェア№1。第2位はオタフクソース。この両社のシェア争いの歴史はなかなか壮絶だ。以下、Wikipediaの記述を引用する。
<(オタフクソースは)全国区のテレビでのPRで知名度が増し、全国進出した(お好みソースは1952年、業務用向けに発売。その後、一般にも発売されるようになった)。2005年に東京都のユニオンソースの株を51%取得。一時はブルドックソースを抜き日本最大のソース会社になった>。しかし、<(ブルドックソースは)2005年5月24日 大阪地方裁判所に会社更生法の適用を申請したイカリソースの支援を表明。その背景には、知名度、シェア共に低い関西地方への販路、市場拡大がある>という状況で、現在のシェア順位に落ち着いている。
では、この商品のターゲットとなる顧客とそのニーズは何だろうか。
東京文化圏に住んでいると、ブルドックソースが全国区のように思えるが実はそうではない。ソース市場は日本全国に中小メーカーや、いわゆる「地ソース」といわれる零細メーカーまでが散在し、社団法人日本ソース工業界に加盟しているメーカーだけで100社にのぼる。そして、地域によって支持されているブランドに大きな違いがある。とんかつだろうが、お好み焼きだろうが、焼きそばだろうか、何の区別もなく、「ブルドック中濃ソース」をかけてしまう関東人のデリカシーのなさに耐えられないとする関西人は多い。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。