日清食品の創業者、安藤 百福(あんどう ももふく)が1958年に開発した、世界初の即席麺といえば、誰しも知る「チキンラーメン」である。Wikipediaの記述によれば、<チキンラーメンの発売により、それまでの「支那そば」「中華そば」にかわり、「ラーメン」という呼び名が全国的に広まった>とあるので、全てのラーメンの原点のような存在だ。そんな歴史あるロングセラー商品が大きな変貌を遂げようとしている気配がある。
ロングセラー商品は、一見、変わらずに売れ続けている商品であると思われがちだ。しかし、実際には時代や環境、消費者のニーズの変化に対応して変化をし続けることで生き残っているのである。
例えば、菓子のポッキーは基本の「ポッキーチョコレート」だけでなく、ご当地ポッキーに至るまで、様々なバリエーションを展開している。コカ・コーラもクラッシックは変わらぬ味だが、現在では「ゼロ」の方がむしろ主流となっている。国民的大衆車であるカローラはその名前こそ継承されているが、1966年の登場以来10代のモデルチェンジを行いながら、様々な派生車種を生んでいる。
時代の変化、消費者のニーズの変化をつかみ、それに応える技術が開発されれば、自社の歴史ある看板ブランドの商品でも、メスを入れるという「聖域なき改革」を日清は断行したのである。
もちろん、ロングセラー商品として、変わることのない「こだわりポイント」を堅持している点も見逃せない。<めんは太くても3分で調理することができ、「すぐおいしい、すごくおいしい。」が特徴の「チキンラーメン」と同様にお楽しみいただけます>(同)とある。「すぐおいしい、すごくおいしい。」は、1984年にイラストレーターの南伸坊を起用したCMで用いられたキャッチコピー以来の、同商品の商品コンセプトとなっている言葉だ。こだわりのポイント、「らしさ」を失わないことも、ロングセラー商品として支持され続ける条件なのである。
ちなみに、チキンラーメンの看板ともいうべき要素がもう一つ、先月変更されている。キャラクターの「ひよこちゃん」だ。
チキンラーメンのキャラクターは、1965年から設定され、初代キャラクターとして、野球帽にそばかす顔の少年「ちびっこ」が描かれた。その後、1991年に2代目の「ひよこちゃん」にバトンタッチした。その「ひよこちゃん」が、つぶらな瞳になって、プロポーションもアタマでっかちな可愛さを増したイラストに改定されたのだ。昨今のキャラクターの流行を取り入れたためであると考えられる。
ともすると、ロングセラー商品はファン層が商品の歴史とともに歳を取ってしまいがちだ。若いファン層へのアピールなど、細かなところまで神経を遣って行っている点にも、生き残りのヒミツが見て取れる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。