「ニチレイ アセロラ」シリーズが売れている。サントリーのニュースリリースによれば、<年間販売計画を300万ケースから500万ケースに上方修正します>という。前年度の販売実績は237万ケース。実に2倍以上の伸長だ。そのヒミツは何だろうか。
4P最後のPであるPrice(価格)に変更はない。しかし、重要な変化がProductとプロモーションを見直してみるとわかる。
ニチレイ時代のオシャレな旧パッケージは、裏面に「恋する国から」というコピーが記載されていた。さらに、「恋はしたい。愛はされたい。」「生まれつき美人なんていない。」など、「恋する格言」が全62パターン掲載されているという凝った作りであった。ニチレイ時代のWebサイト(現在はクローズ:flash動画がYoutubeにアップされている)も特徴的だ。「恋する国から」をテーマに、外国人の恋人二人をモノクロで表現するなど、オトナなトーンでまとめられている。ニチレイはターゲットをズバリ、若い女としていたことは間違いない。
対して、サントリーはわかりやすさを前面に出したベタなパッケージに変更した。そしてCMは「アセロラ体操」だ。それもキャラクターとして起用している仲里依紗は20歳、光浦靖子は39歳。幅広い年代を狙っていることがわかる。
この手のCMは「まねされてナンボ」の側面が大きい。大ヒットしたガム、ロッテ・Fit’sの「フィッツダンス」の例でも明らかだ。同商品がYoutubeでダンスコンテストを展開し、大きな口コミ効果を挙げた例が有名だが、アセロラも自社サイトでユーザーの体操動画を募集。子どもから若者、職場の仲間と幅広い年代が参加している。メインターゲットの女性だけでなく、その子どもや友人・知人にまで飲用者が広がることを示唆しているといえるだろう。
マーケティングはCMなどのPromotionの目立った部分だけがどうしても目に付く。そして、販売好調などのニュースと結びつけて考えてしまうことになる。しかし、CMだけでは商品は売れない。
今回のアセロラドリンクは、サントリーに移管されたことを機に、ターゲットを拡大した。それに伴い、パッケージやCMを改定し、さらにサントリーならではの営業力販売店の棚をおさえ、自販機に商品を投入した。さらに、飲料事業者ならではの開発力で、トレンドにあった商品も開発し、追加発売した。その結果が、「対前年2倍以上」の成果となって現れているのである。
「マーケティングとは何か」をひと言うと、「売れ続ける仕組み作り」という表現がよく用いられる。「売る」という行為ではなく、市場のトレンドなどの環境変化を捉え、適切なターゲットを設定し、4Pを最適に組み合わせて「仕組み」を作ることがマーケティングなのだ。
サントリーによる「ニチレイ アセロラ」のヒットは、そのひとつの好例であるといえるだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。