美容サロンが展開する、顧客向け「FREE」が意味するもの

2010.06.10

営業・マーケティング

美容サロンが展開する、顧客向け「FREE」が意味するもの

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「お願いしまぁ~す!」。美容サロンの若いスタッフが来店促進のビラを配布する、おなじみの駅前や街中の風景だ。新規顧客の来店ばかりを狙っているように見える美容業界で、従来にない再来店促進の施策を始めたサロンがある。東証一部上場企業でもある大手、株式会社田谷だ。

 来店頻度を高め、スタッフやサロンとの関係性を深めれば、さらにオイシイ状態を作り出すことができる。
 来店して、カットをする。それが最低限の取引だ。相談に応じ、アドバイスをすることによって、ちょっと冒険してみようかという気に顧客がなる。パーマやカラーの利用を獲得できる。さらにヘッドスパの利用を促進することができたり、一般のドラッグストアでは販売していないシャンプーやトリートメントなどの物販の可能性も高まったりする。つまり、関連商品の販売である「クロスセリング」によって、1顧客、1来店における売上げとだけでなく、利益率向上を図ることもできるのだ。株式会社田谷の決算短信を見ると、売上げ以上に営業利益が大きくへこんでいる。それをカバーする狙いも当然あるのだろう。

 この事例は、美容サロンの再来店促進による売上げ・利益回復施策というだけの意味合いではない。もはや日本市場の縮小傾向は人口動態から明らかだ。真っ新な新規顧客が呼び込めるというのはもはや幻想に過ぎない。果てしない競合との顧客の取り合いが繰り返される世界になっているのだ。しかも、景気が回復したとしても消費者の購買欲求が元の水準に戻ることはないといわれている。であれば、顧客をいかにケアして囲い込み、利用促進の提案を行うかは全業種共通の課題となってくるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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