炭酸飲料、特に「ゼロ系」といわれる糖類やカロリーがゼロの飲料が好調だ。一部のメディアでは「飲料の勝ち組」と持ち上げている。しかし、その売れ行きはいつまで続くのか。
では、今後「ゼロ系飲料」はどこへ行くのか?
勝負を分けるのは、「ターゲットを明確にする」ことと、単なるゼロに「足し算」や「引き算」をうまく行って差別化をすることだ。
記事に登場した「大人のキリンレモン」はその名の通り、「大人」をターゲットに据えている。従来、「キリンレモン」は「家族品質」をキーワードに、子どもを中心として家族全員に愛されるブランドを目指していた。しかし、競争環境の激化と少子高齢化のマクロ環境の変化を受けて、ターゲットを鮮明化したのである。
5月25日に発売され、氷室京介のCMをガンガン流しているアサヒ飲料の「グリーンコーラ」も、同社が仕掛ける「大人炭酸」シリーズの第1弾だ。続く第2弾は、恐らくジンジャーエールが控えている。
上記の両商品は同時に、「足し算」によるポジショニングの明確化を図った商品でもある。
「大人のキリンレモン」は、「回復系アミノ酸オルニチン」を投入し、オトナの元気を応援する。アサヒ飲料の「グリーンコーラ」は、着色料・保存料・カフェインが「ゼロ」だが、あえて糖質やカロリーをゼロにしてはいない。糖類に果糖・ぶどう糖液・砂糖を用いて自然な甘みに仕上げている。どちらも既存の商品カテゴリーに、独自性を示す要素を「足し算」して差別化を図っているのだ。
一方、「引き算」を行っているのが日本コカ・コーラの「コカ・コーラ ゼロフリー」だ。
<オトナが夜のリラックスしたひとときを楽しむための飲み物><糖分ゼロ、保存料ゼロ、合成香料ゼロに加えて、カフェインもゼロ(=カフェインフリー)>という徹底ぶりだ。「カフェインまでなくしたらコーラじゃない?」とも思ってしまうが、それでいてコーラらしい味わいを失っていないという驚きを与えてくれる。さすが炭酸飲料、コーラ飲料のリーダーといえるだろう。
競争が激しくなれば、当然、差別化ができないものは淘汰される。
しかし、その中でターゲットとポジショニングを明確にして製品特性を際立たせることができたものは生き残ることができる。「勝ち組」という「ゼロ系炭酸飲料」に淘汰も確かに波がやってくるかもしれない。だが、消費者にとって魅力を明確に示せて、支持を得られた商品は残っていくという変化が今後予想されるのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。